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第297回:びっくり仰天“シノケンは永遠に不滅です”!!なぜヒトはパリダカを走り続けるのか?
(06.12.25)
エッセイ
第297回:びっくり仰天“シノケンは永遠に不滅です”!!
なぜヒトはパリダカを走り続けるのか?
■永遠のネバーギブアップ男、シノケン
いやおでれーたよおでれーた。偉大なる正月恒例のマラソンクルマイベント、“パリダカ”ことパリ・ダカール・ラリーの日本人初ウィナーであり、実はWRCでも日本人初ウィナーになっている“シノケン”こと篠塚建次郎選手だけど、先日、日本に帰国してるってんでお会いしてみたら驚き。また来年も走るんだってー!!
今度はトーヨータイヤからの協力があるとはいえ、全然ワークス体制じゃなく、ほとんどプライベーターとしての参加なんだけど、まさかここまで続くとは……。
まさにJ2落ちでもがんばってる三浦和良選手か、メジャーリーグ復活を狙う野茂英雄か、パリダカのシノケン!! って感じになってきた永遠のネバーギブアップ男。ワタクシ、業界一のバカマニアことコージ小沢がズバリインタビューしてまいりましたっ!
今年は何回かテストを実施。とはいえくれぐれも順位は期待しないように!!
■21年目で知った、本当のパリダカの楽しみ方
コージ:
あのぅ、失礼ですけど、引退したんじゃ……?
シノケン:
アハハ(笑)。そういう風な報道になってるけど、自分としては引退したつもりはまったくなかったんだよ。確かに昨年、日産がワークスから撤退した時に視力も落ちてきたし、昔じゃありえなかったところで転倒もしてたんで、優勝争いは無理だなぁって思ってたけど、それはそれで別のパリダカの楽しみを見つけてたんだ。機会があれば走りたいって思ってた。
コージ:
別の楽しみというと?
シノケン:
前回はね。予定では9月にマシンが仕上がるはずが、11月にズレ込んで事前のテストはイタリアでした2日間のみ。トラブルは当然で、毎日サスが壊れて、順位がどうのこうのじゃなくて、絶望の淵から走ってた。毎日、完走できただけで「良かったなぁ」ってそういう感じで、スタックも10回以上はしたね。オレとしては21年間やってたパリダカとは全然違うパリダカで、もちろん勝つってことは最初から諦めてるような状況だったんだけど、それはそれで凄く楽しいってことに気がついたんだよ。
コージ:
今までは勝つためにパリダカに出てたわけですよねぇ?
シノケン:
まったくその通りで常に勝とうと思って21年間やってきたし、今だって勝つのは嫌いじゃないんだけど、パリ・ダカールってそれだけじゃないんだよ。
コージ:
というと?
シノケン:
例えばスタックってのはスタックしやすい場所だからするわけで、なんとか這い出ても、隣にまだハマってるクルマがいるわけじゃない。すると今度は“急いでない旅”だから、それを助けたりする。とどうなるかというと、休憩ポイントでまた会って話したり、一緒に食事して「明日もがんばろう」ってなるんだよ。そしてこれが凄く楽しくて、恥ずかしながら、本当のパリダカの楽しみを21年目にして知った思いですよ。
今後の展開を睨み、トーヨータイヤが(若干)協力。でも全然ワークス体制じゃありまっしぇーん!
■コージ「ソレって恥ずかしくはないですか?」
コージ:
なんとなくわかる気もしますが、それって今までと180度方向が違うような気がしません? 昔はとにかくヒトを押しのけても勝とうとしてた篠塚さんが……。
シノケン:
アハハ。年を取ったといえばその通りなんだろうけどね。でも楽しいからやる、そのスタイルは昔とまったくかわってないんだけどね。
コージ:
いわゆるソレって恥ずかしくはないですか。オレはまったくそう思わないけど、日本には昔から“老醜を晒す”という言い方があって、そういう粘りを潔しとしない見方もありますが。
シノケン:
それもわからなくはないよね。でも引退を考える年になって、それって誰のためなのかなぁと思ったんだよ。もともと、誰のために走って、誰に対して恥ずかしいのか。それを考えていたら、オレはオレのためにずっと走ってきたわけだし、オレは今でも別に走ることを恥ずかしいとは思わないことに気づいたわけ。
コージ:
要するにそこで価値観が変わったわけですね。今までは「勝つ」ためにやっていたのが、今度は「楽しむ」ためになった。凄い変化ですよ。
シノケン:
そうかもしれない。でもね。自分自身を振り返ってみると、もともと走ることが好きだったんだよ。それだけなのね。小さい頃から体が弱くて、クルマの運転ぐらいしかとりえがなくて、それがありがたいことに才能に恵まれて自然に勝てるようになったけど、そもそもとにかく走るのが好きで、四六時中走ってたんだから。
シノケンこと篠塚建次郎。パリダカには1986年から参戦し、以後アフリカの砂漠を舞台としたラリーレイドの“顔”として戦ってきた男。優勝は1997年の1回のみ。三菱の社員でもあった篠塚は、2002年に三菱から事実上の引退を勧められたのだが、現役続行を望んだため退社。今度は日産からエントリーしたものの、好成績には結びつかなかった。2006年の大会を最後にパリダカ引退、と思われたが、2007年1月、再びアフリカに戻ることを決意、現在準備を進めている。
■「元チャンピオンが楽しさを伝えなきゃ」
コージ:
ある意味“原点に戻った”と?
シノケン:
そう。それからパリに住んでヨーロッパの人たちに影響されたっていうのもあるよね。
コージ:
というと?
シノケン:
向こうの人ってパリダカでもなんでも元チャンピオンが平気で出てるじゃない。ルネ・メッジなんて凄いいいドライバーで、ルマンでもF1でも勝ってるし、パリダカでも84年にポルシェで勝ってるドライバーなんだけどいまでもフラっと出たりする。
コージ:
959で勝ちましたよね。
シノケン:
それからジャッキー・イクスにしてもF1はもちろんルマンで物凄い勝ってるドライバーでパリダカでも勝ってるけど、時々見かけたりする。それも普通の人たちと一緒に。別に毎年出るわけじゃないし、毎回勝ちに行ってるわけじゃないけど、それって単純に楽しいし、ステキなことじゃない?
コージ:
その通りだと思います。先日、オレもグッドウッドでジャッキー・スチュワートさんと一緒に走りましたけど、それだけでシビレましたよ。こっちはもう言葉に尽くしがたい喜びで。
シノケン:
そういう人たちを見てたらオレも走ってもいいんだって思えたし、走ろうって気になる。
コージ:
なるほど。
シノケン:
それから日本ではよくモータースポーツは文化じゃないって言われるけど、そういうことをまったくしてこなかったんだよね。昔のチャンピオンが出てきて走ったりしないじゃない。せいぜいイベント会場にいるだけで。
コージ:
言えてます。
シノケン:
それじゃダメなんだよ。それじゃモータースポーツが本当の意味で根付かない。元チャンピオンが走って楽しさを見せたり、楽しさを伝えなきゃ。向こうはそういうことをちゃんとやってきてきてるんだよ。歴史だけじゃない。
コージ:
言えてます。オレも鬼の星野一義さんと一緒に走ったりしてみたい。
シノケン:
だから中嶋(悟)君も(鈴木)亜久里君もどんどん走ったらいい。別にいいんだよ。F3でもジムカーナでも。僕はこれからそういう活動をどんどんやっていこうと思ってるの。
コージ:
いいじゃないですか! 応援してますよ!
シノケン:
ありがとう。とりあえず今度のパリダカをひとつヨロシク。ただし、順位はあまり期待しないようにね。そういう段階じゃないから(笑)。
コージ:
了解いたしました(笑)。
ってな具合のシノケン選手。ハッキリ言って昔に比べて、憑き物が取れたって感じの穏やかな顔をなさってた気がしますが、こちらとしては逆に魅力を感じてしまいました。
人を寄せつけない“孤高のチャンピオン”もいいけど、ざっくばらんな“ちょい速オヤジ”もいいじゃない。っていうかオレはそっちの方が好きかも? ってなわけで今年のパリダカ&シノケンに注目なのだっ!
(文と写真=小沢コージ/2006年12月)
小沢コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。
ホームページ:
『小沢コージでDON!』
→過去記事リスト「小沢コージの勢いまかせ!!」
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