トップエッセイ(リスト)第11回:「日豪混血プレステージサルーン」マツダ・ロードペーサーAP(1975〜77)(後編) (06.09.13)
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第11回:「日豪混血プレステージサルーン」マツダ・ロードペーサーAP(1975〜77)(後編)



ショーファードリブン用国産3ナンバーのマーケットに食いこもうと、マツダはオーストラリアのホールデンから輸入したボディに自社製ロータリーエンジンを積んだロードペーサーを開発。月販100台を狙ったのだが……。
総排気量654cc×2から最高出力135ps/6000rpm、最大トルク19.0kgm/4000rpmを発生する13B型ロータリーエンジンは、コンパクトゆえ補機類に隠れてほとんど見えない。


■もの足りない走り

1565kg (ベンチシート仕様)というロードペーサーAPの車重は、1800kg前後もあったプレジデントやセンチュリーに比べればかなり軽かった。しかし、本来は強大な低中速トルクをもつ5リッターV8や3.3リッター直6エンジンで動かしていたボディに20kgmにも満たない最大トルクでは、いかにも荷が重く見えた。しかして『Gar Graphic』1975年7月号に掲載されたロードインプレッションでは、「その走りっぷりは正直なところもの足りない」と評されている。

ターボでもあればそうした弱点はかなり改善されたろうが、これはロータリーターボが実用化される7年も前の話なのである。また、いくら看板とはいえそこまでロータリーにこだわらなくても、と思う方もいるかもしれない。だが、そもそもレシプロも含めて当時のマツダでもっともパワフルな乗用車用エンジンが13B であり、ほかに選択肢はなかったのだ。

余談になるが、全長6m以上、車重3トン近くあるボディに同じ13Bを積んだ小型バスのパークウェイロータリー26に、定員乗車(26人)したときの走りはいかなるものだったのか……非常興味深いものがある。
77年8月のマイナーチェンジ後のモデル。フロントグリルのパターンがわずかに変わっている。
マイナーチェンジ後のインパネ。メーターのデザインが改められた。
【スペック】
マツダ・ロードぺーサー:全長×全幅×全高=4850×1885×1465mm/ホイールベース=2830mm/車重=1565kg(ベンチシート仕様)/駆動方式=FR/エンジン=654cc×2水冷2ローター(135ps/6000rpm、19.0kgm/4000rpm)
■3年間、800台

生まれ故郷のオーストラリアでは、ホールデン・プレミアは大柄とはいえオーナーカーであるが、ロードペーサーAPの主たるマーケットはショファードリブンカーである。そのためインテリアには高級な布地のシートが奢られ、マルチエアコンやオーディオ、パワーウインドーやリモコンミラーなど各種パワー装置を標準で備えていた。バリエーションはなくモノグレードで、前席にベンチシートかセパレートシートを選べるのみだった。
価格はベンチシート仕様が 368.0万円、セパレートシート仕様が371.0万円だったが、これはセンチュリーの317.6〜342.0万円、プレジデントの 332.8〜407.8万円、またステーツマン・デビルの348万円、クライスラー318の371万円といったライバル車と比べて、けっして割安とはいえなかった。

不足気味のパフォーマンスに、安くはない価格。前述したCGのロードインプレッションでは、それを補うメリットとして安楽な居住性とライバルたちのV8に比べロータリーエンジンのメインテナンスが容易な点を挙げていたが、残念ながらこの日豪混血のプレステージサルーンは保守的な市場の壁を崩せなかった。

当初マツダが掲げた月販100台という予定に対して、デビューした75年こそ生産台数491台を数えたが、翌 76年には183台と半数以下に。77年8月には内外装にマイナーチェンジを施し、ショーファードリブンのみならずパーソナルカーとしての需要にも色気を見せたが、逆に生産台数は126台とさらに減少、この年限りで生産中止された。

マツダ初の国際分業の試みは、約3年、ちょうど800台を生産したところで幕を下ろしたわけだが、それから2年後の79年、マツダは経営安定化を目指しフォードと資本提携を結ぶことになるのである。その後バブル期には北米に向けたプレステージカー“アマティ計画”が立案されたが、マツダの業績悪化によって中止された。結局のところ、ロードぺーサーはマツダにとって最初で最後のプレステージサルーンとなったのだった。

(文=田沼 哲/2002年7月11日)
田沼 哲
NAVI(エンスー新聞)でもお馴染みの自動車風俗ライター(エッチな風俗ではない)。 クルマのみならず、昭和30〜40年代の映画、音楽にも詳しい。



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