■中高年の登山ブーム、問題あり!
「天候は回復しないと思うよ」
木曽駒ヶ岳の天候を熟知したおやじさんが言うのである。彼の判断は間違いないだろう。仕方がない、予定は変更だ。
氷河期にできたといわれる濃ケ池を見たかったし、岩塊斜面をもっと歩いてみたかった。けれど天候が悪い以上、無理は禁物である。僕たちは早々に尻尾を巻いてロープウェイ駅へと逃げ帰ることに決めたのだった。
だが、どこにでも無謀な輩はいるもので、大多数の登山者が帰途についたというのに、たった1人だけが「スケジュールを強行する」と言い張って山小屋のおやじさんのアドバイスを聞き入れない。
60年輩と思しき彼は、ロープウェイ駅には向かわず、下山までに8時間以上はかかると思われるコースを歩くのだという。何の根拠もないくせに、しかもアイゼンも持っていないくせに、自信たっぷりなのである。こういう連中が遭難騒ぎを起こすのだ。
小屋をでると「肌を刺すような」ではなく、肌に突き刺さる雪まじりの強風。しかも濃いガスが視界を遮っていた。
冬山の怖さを実感しながら昨日の道を逆戻り。中岳を登るあたりで先に山小屋をでた数人の中高年グループに追いついた。彼らもまたアイゼンを用意しておらず、そのために雪の急斜面に難儀していたのだった。