日本では2009年4月から公開している、クリント・イーストウッド監督・主演の新作映画「グラン・トリノ」が、少し前にイタリアでも公開された。
孤独で偏屈な老人(イーストウッド)と、アジア系少年の心の交流を描いた作品である。
この作品、タイトルを見て「グラントリノとは何ぞや?」と思った方は多いだろう。自動車ファン歴の長い人は「どこかで聞いたような」と首をひねったに違いない。
「グラントリノ」とは、米国フォードにおける1970年代の1モデルである。映画の中で、老人は元フォード工場の組立工ということになっていて、自ら携わった彼の愛車がグラントリノという設定だ。
グラントリノは“Gran Torino”と書く。フォードが姉妹車「トリノ」とともにイタリアにおける自動車の都トリノに敬意を払ってつけたものといわれる。
グラントリノ以外にも、1960-70年代のフォードは「コルチナ」「カプリ」といったように、イタリアの地名をつけるのが得意だった。背景には
以前書いたように、当時の社主ヘンリー・フォード2世が大のイタリア好きだったことがあるのだろう。
フォードだけではない。GMはビュイックに「リヴィエラ」「エルドラード(黄金郷)」、クライスラーはプリマスに「ベルヴェデーレ(展望台)」なんていう名前をつけていた。北米メーカーはスペイン語名も好きだった。スペイン南部の都市名である「(フォード)グラナダ」をはじめ、道を意味する「(シボレー)エルカミーノ」、動物名である「(シボレー)インパラ」など、地名以外でも気になる車名を数多く見つけることができる。
1976年から今日まで続く、あのフォード「フィエスタ(祭り)」もその名残といえる。