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第240回:復活!空冷ポルシェ(その1)発見!クルマはワインだった!?
(05.11.17)
エッセイ
第240回:復活!空冷ポルシェ(その1)発見!クルマはワインだった!?
■5年放置の964
と、とんでもない法則を発見してしまいましたっ。それは「いいクルマは寝かせても美味い」の法則。高級ワインじゃないんだけどさ。
というのも久々に車検を取って復活したわけですよ。わがポルシェ911。92年式の964型で、当然空冷エンジン物なんだけど、すっかり実家に放置してました。なんか昔は動かすのが重かったんだよなぁ。
クルマがマジョーラカラーで塗りたてピッカピカだったってのもあるし、駐車場もボロかったし、買って半年後には調子こいて新車の「プジョー206CC」を買ったこともあって、ついぞほったらかしでした。
あれから5年は経つかいなぁ……途中、何回か動かしたけど、結局もとの木阿弥。実家の母ちゃんに正月、帰るたびにブツクサ言われるわけです。
「アンタこれどうすんの? 邪魔でしょうがないんだけどね。売ったら?」
でもねぇ。売るってなんかヤなんだわよ。買ってまだ1000kmぐらいしか乗ってないし、最新型911は俺の好みからどんどん離れてくし、理想的には、50歳ぐらいになって、郊外にでも住めるようになったら、たまーに乗りたいなぁ……なーんて言ったら間違えなく母上に怒鳴られますけどね。ぬはは。
■ニートは卒業
しかしそんなに悠長なことも言ってられなくなりました。さらに手のかかる72年式ロールスを買っちゃったし、足代わりに「MINI」だの「スバルR2」だのあるし、ここまでくると単に惰眠を貪らせておくのも限界。とりあえず車検でも取るか! となったわけです。
なんつーか“クルマ版ニート”も卒業だよねー。たまに乗ると車内に小さくクモの巣とか張ってるのもヤだったし。だから最初はことによると「売るか?」もアタマのスミにありました。いまでも964ならありがたいことに、距離少なめなら300〜400万円の値が付いてるし、なんといってもあの形の911は定番中の定番。日清カップヌードルのスタンダードみたいなもんだよね。いつ食べても苦しゅうない。激辛チリ味とか和風トンコツ味なんかと違って、どこに行ってもどこの人にも愛される。就職先に苦労しない奴なんですよ。
ところがですね。いざ5年ぶりに乗ってみるとカップヌードルじゃないんだけどこれがイイんだなぁ。
まずクルマがしっかりしてるのには驚き。バッテリー換えただけで常に一発始動! クモの巣張ってるったって1箇所ぐらいだし、なにより乗るといまだ新車の匂いが残ってるわけ。凄いじゃんか、オマエ! ある意味、ポルシェへの信頼はますます高まりましたねぇ。ま、実家駐車場が屋根付き壁付きのボディカバー付きってのも大きいんだけどさ。
■“寝かせ911”はやっぱ美味い!?
加えてね。一番驚いたのはワインじゃないけど“クルマも味が変わる”こと。熟成されるというか。
えー、そんなのウソだ〜って正確にはウソで、本当はクルマの味が変わるわけではなく、“味わう俺”のほうが変わる。以前、敬愛する漫画家の楠みちはるさんが言ってたけど「自分とクルマとの距離が変わる」のよ。
歳をとったんですかねぇ。いろんなクルマに乗ったからですかねぇ。空冷911ってこんなに良かったんだぁって再発見がある。
もちろん加速は大したことないのよ。今の国産スポーツ系のほうがよっぽど速い。だけど、たとえばエンジンをかけ、加速していく時の滑らかさ、アクセルペダルに対する自然な反応、ブレーキのスムーズかつギクシャクの一切ない効き具合、ステアリングのナチュラルさには心打たれるものがある。「ああ、ポルシェってこんなにトゲのない、人に優しいクルマだったのかぁ」といまさらながらに驚く。いわゆる“驚きの速さ”を狙った乗り物ではなく、人が思う通りに走る、ストレスなく操作できるということに重きを置かれたクルマなんだよね。しかも特別チューニングした気配もない。“素”のまんまって感じ。リアエンジンって特殊な形態はとってるけど。
特にいいのはステアリングフィール。重くなく軽くもなく、ダイレクト過ぎず、敏感かつ自然で路面の状況がよくわかる。 なんというかな。10年前は焼肉大好き人間だったんだけど、最近になって焼き魚の味もわかるようになってきたというか。昔から知っている味なんだけど、昔よりもっと心に染み入るというか。うーん、マンダム!?
あとねぇ。まさしくポルシェ、特に911はワインみたいなものだと思った。基本的にいいクルマなのはもちろん、年式ごとに微妙に違うわけじゃないですか。だってさ。単純に964とか993とか型式で呼ばれるだけでなく、前期物、後期物なども飛び越えて「その964って何年物?」とか聞かれるんだよ。
ポルシェがイヤーモデル制をとっているのは有名で、毎年、微妙にマイナーチェンジが施されるわけだけど、その年ごとの違いがよりハッキリわかるクルマだよね。基本的にはみんな“ポルシェ911”なんだけど、その年によって味が良かったり、薄めだったり、濃い目だったり。
単純に古いクルマが素晴らしいと言う気はありません。きっと人によって好みは違うし、今の水冷911のが肌に合う人もきっといると思う。静かだし乗りやすいしね。
でもね。こうやってクルマを楽しむのも一興だと思いました。気に入った、いいクルマを少し年月をおいて楽しむ。そしてクルマはもちろん、自分の経年変化そのものを味わうという。これぞまさしく“寝かせグルマ”! 環境に恵まれてないとできないけどね。でも、結構、文化的だと思うんだけどな。どう思います?
(文と写真=小沢コージ)
小沢コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。
ホームページ:
『小沢コージでDON!』
→過去記事リスト「小沢コージの勢いまかせ!!」
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