というわけで、実際に乗ったシグナム、前席はベクトラと同じである。非常にチュートニックであり、機械的品質感の演出がうまい。
問題は後席で、これは考え次第である。比較的低いルーフ、内張のデザインやサイドウィンドウオープニングの切り方によって、そんなに広く感じないという意見もある。でもリポーターは、それはそれでいいと思った。実際の寸法は十分あるのだから、感覚的にそれほど広く感じさせない方が、安心感があるように思えたのだ。
つまり物理的スペースと心理的スペースで、どう快適感のバランスをとるかということである。名翻訳家の深町真理子さんの表現を借りるなら「心地よく秘密めいた場所」の感覚だ。エアラインにたとえるならBAのアッパーデッキ・ビジネス窓側の感覚である。実際は従来のシートより幅は狭いのだが、自分の心地よい空間としてくつろげる。
エンジンは、お馴染みの3.2リッターV6、名機たる2.2リッター4気筒の直噴バージョンと、サーブ「9-3」と同系の低圧ターボ付き2リッターも設定された。しかし、試乗会で乗れたのは3.2リッターV6のみだった。まあこれはちょっと中速域から上がうるさいが、真面目にトルクを稼ぎ出す、なんとなくドイツの農民のようなユニットで、日本では例によって、ティップ付き5段ATと組み合わされる。
タイヤは、45プロファイルと50プロファイルの17インチを履いていたが、特性に合わせたダンパーセッティングがまだ詰まっていない感じで、場所によってはハーシュがやや強いし(特に重要な後席で)、ベルリン郊外の波状路ではピッチングが感じられた。ただし、オペルのエンジニアはそれを理解しており、生産型ではきちんとフィックスされるという。余談だが、エンジニア個人的には16インチタイヤの方がいいと思う、ともいっていた。でもこのシグナム、ダイナミック能力云々のクルマではない。あくまでもベクトラ系の“個性派”なのである。
そういった意味では、こんなクルマは珍しい。実際、イプシロンアーキテクチュアになった現在のベクトララインナップのなかで、もっとも個性的かつスタイリッシュなリアエンドをもつといえよう。
いまオペルに必要なのは、こういうサービス精神溢れたモデルだと思う。すくなくともJALやANAのビジネスクラスより、心のこもったサービス精神に富んでいると感じた。輸入は2003年秋からで、
GTSの約10万円高になるという。
(文=webCG大川悠/写真=日本ゼネラルモーターズ/2003年4月)