■ すばらしくフレキシブル
富士五湖周辺で短時間ながら試乗した“4ドア4シータースポーツカー”、マツダ「RX-8」の第一印象を記す。
まず乗ったのは「Type S」の方で、これは250ps/8500rpmのハイパワーエンジン+6段MTのパワーパックに、225/45R18大径タイヤを組み合わせた、いわば硬派向けモデルである。
ホテルの玄関口から穏やかに発進しようとして、うっかりエンジンをストールさせ、おおいに恥をかいた。ロータリーエンジンに乗るのは久しぶりのことだが、極低回転域では依然として、レシプロに較べるとトルクの絶対値が小さいことを再認識した。ちなみに、トルクピークの22.0kgmは5500rpmという、かなり高回転で発揮される。
この点をのぞけば、RX-8は全域にわたって自然で、実に乗りやすい高性能車だった。ドライバー正面に備わるレヴカウンターによれば、レッドゾーンは9000pm以上であり、新型ロータリーエンジン「RENESIS」はなんらストレスなしに高回転が利く。だから、最初のうちは各ギアでいっぱいに引っ張って、無類にスムーズで静粛なロータリーの醍醐味を楽しむことだろう。
だが間もなく、このエンジンが同時にすばらしくフレキシブルなことに気付く。同排気量に相当するレシプロエンジン車に較べ、全体にギアリングが低いことにもたすけられて、特に急ぐ気がなければ、ローで6000rpmくらいまで加速したら、2ndを飛ばして3rdへ、次は4thをスキップして5thへ、1→3→5という横着を決め込むことさえ充分可能である。本格的なレースをするなら別だが、すくなくとも路上の実用に、この6段MTは「率直にいって無用の長物」と言っては言い過ぎだろうか。
210ps/7200rpm、22.6kgm/5000rpmのスタンダードエンジンを積むグレードに標準装備の5段MTとギア比を較べると、6段型はローが特に低く、全体に広く分散している(ファイナルギア比は同一)。クラッチも大径なことから推して、将来RX-8で“本気にレースする”ためのホモロゲ対策なのだろうか。筆者は最近のレース事情に疎いので、これはすでに公知の事実なのかも知れない。ギアチェンジは非常に軽く、シフトストロークも手首の動きだけで可能なほど小さく、正確で気持ちよい。
この日は高速道路を走るチャンスがなかったので、正確な動力性能についての評価は差し控える。しかし、実用上は充分以上であり、なによりも無類に静粛でスムーズなので、ロングランには最適だと思った。