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トップインプレッション(リスト)ルノー・メガーヌ2.0(4AT)【短評】 (04.02.28)
インプレッション
ルノー・メガーヌ2.0(4AT)【短評】
【スペック】全長×全幅×全高=4215×1775×1460mm/ホイールベース=2625mm/車重=1320kg/駆動方式=FF/2リッター直4DOHC16バルブ(133ps/5500rpm、19.5kgm/3750rpm)/車両本体価格=253.0万円(テスト車=同じ)
重要なのは基本性能


ルノー・メガーヌ2.0(4AT)
……253.0万円

緊急時にドライバーを補助して事故を防ぐ電子デバイス「ESP」が、コンパクトカーにも普及しつつある。「ルノー・メガーヌ」が搭載する、最新の「ESP8.0」に加わった新機能「アンダーステアコントロール」を試すイベントが、富士スピードウェイで開かれた。自動車ジャーナリストの笹目二朗が、テストにのぞんだ!


凍結路と同程度の低ミューを再現したスキッドパッド上で、オーバーステアに陥ったメガーヌ。もちろん、ESPはオフである。リアが流れ、修正舵をあてているのが、おわかりいただけると思う。

普及が進む「ESP」
走行安定性を高める補助装置として、ブレーキのロックを防ぐ「ABS」と同じくらい、「ESP」(エレクトリック・スタビリティ・プログラム)が一般化してきた。ポルシェの「PSM」(ポルシェ・スタビリティ・マネージメント)やトヨタ「VSC」(ヴィークル・スタビリティ・コントロール)など、呼び名の違うデバイスはあるが、その目的は同じ。ヨーモーメント(旋回方向への力)を制御して、車両を安定させるシステムである。
ESPのサプライヤーは、1995年に「ESP5.0」をリリースしたBOSCH製が大半を占める。現在は4世代目にあたる「ESP8.0」に進化し、ユニット重量は3.1kgから2.3kgに減少。容積も2.4リッターから1.6リッターへと小型軽量化され、コンパクトFF車にも採用が拡大しつつある。

これまでのESPは、スピンへとつながる可能性の高いオーバーステア対策として、高出力エンジンを搭載する後輪駆動車に多く採用されてきた。急激なヨー変化(スピン)を防ぐことに重きが置かれ、基本的に安定性の高いFF車には、あまり必要性を感じなかったのだろう。
しかし、ESPのメカニズムを利用すれば、4輪に別々のブレーキ力を与えて旋回に導くヨーを発生させる、つまり、アンダーステアを修正できる。普及率の高いFF車のステアリング特性を補助する試みは、ESPの普及にともなう当然の成り行きだ。

ESP8.0に加えられたのが、「USC」(アンダーステアコントロール)と呼ばれる新機能。ヨーモーメント制御に加えて減速制御を付与することで、実際のクルマの挙動をドライバーの要求に近づける仕組みである(新機能については、写真を参照ください)。
“日本初上陸”という、最新のESP8.0を備えた「ルノー・メガーヌ」に乗り、動作を体験試乗するチャンスが富士スピードウェイで与えられた。

【ESPってナニ?】
ESP8.0に搭載された、アンダーステアコントロールの説明図
(提供=株式会社ボッシュオートモーティブシステム)

突然の障害物などを避けるシチュエーションを想定した「ダブルレーンチェンジ」を試みるメガーヌ。70km/hから急ブレーキをかけて障害物を避け、その後、元のレーンに戻るテストである。ESP非装着車では、場合によっては、元のレーンに戻る際スピンに陥る。
ダブルレーンチェンジで元のレーンに戻る際にも、後輪内側が浮き上がった。

ESPがどう働くか、その概念を動画でご覧ください。
新機能の効果は……
イベントは、クルマの限界付近における挙動を試すため、サーキットのジムカーナ場で行われた。ただし、デモンストレーションの方法として、課題が残ったことを明言しておく。ESPの効能を試すというより、クルマ自体の特性に起因する別の面が表れたのだ。
まず、高ミュー路において、アンダーステアコントロール機能を試した。急ハンドル操作や定常円旋回で、意図的にアンダーステアを発生させ、デバイスの働きを見るわけだ。アンダーステアを簡単に説明すると、旋回しながら速度をあげていったとき、ステアリングホイールを切っても思ったほど曲がらず、クルマが外へふくらんでいく現象である。

ESP8.0装着車の場合、まず4輪のブレーキで減速させ、後内輪のブレーキ力を強く、前外輪のブレーキ力を弱めることで、ドライバーが意図した方向への旋回を助ける。これが、新機能が作動したときのメカニズムだ。
しかし、今回のテストでは、旋回に必要な舵角より大きくステアリングを切った状態で減速すると、捩じられた前輪に荷重が加わりグリップが回復。ステアリングの舵角通り急激に切れ込む「タックイン現象」が見られた。さらに、アンダーステアの強いクルマは、基本的にリアのアライメントにトーインを強める特性を与えるため、リア内輪がリフトしてしまう。メガーヌも3輪走行になってしまった。これでは、後内輪のブレーキを摘む余地がなくなり、アンダーステアコントロール機能が十分作動しない。

というと、メガーヌにESPを装着してもあまり効果がない、と思われるかもしれないが、早合点してはいけない。ジムカーナ場やサーキットは公道より路面ミューが高く、サスペンションへの入力が実用域を大きく超えるため、それなりの対策が必要になるだけのこと。実用車を、特殊な条件に合わせるわけにはいかない。ESPの効果を純粋に試すなら、もっと実用域に近い条件設定が肝要だった、ということだ。

一方、低ミュー路におけるアンダー&オーバーステア制御は、非常に効果的であることが確認できた。もともとグリップしないから、後輪がリフトすることはない。4輪それぞれに作用するブレーキ制御により、アンダーステアでは旋回を助け、オーバーステアでは旋回を引き戻してくれる。ステアリング操作どおりに、クルマが曲がるというワケだ。

【ESPはこう働く】
突発事態に価値あり
ESPの実効にありがたみがあるのは、こうした基本特性の修正より、むしろ、公道で遭遇しうる様々なキケンに対応できることだ。コーナー出口の路肩に砂利が浮き出ていたり、タイトコーナーをまわっていて見えない内側に水たまりがあるなど、目で確認できない状況の突発事態に、救済能力を発揮するのだ。
突然のアンダーステアに対応すべく、左足ブレーキを使えば4輪、サイドブレーキをひいても2輪に、ブレーキが作用してしまう。ESPなら、1輪ごとに違ったブレーキ力を与え、可能な限りのグリップを引き出す。ヒトの力ではできないことを可能にするところに、電子デバイスの価値が見いだせる。

アンダー&オーバーステアといったクルマの基本的なステアリング特性は、セッティングを変えればいい。ジムカーナ場など、クルマの状況が把握できる場所なら、テクニックでカバーするのが筋。ESPは、クルマの“悪癖”や、ドライバーのムチャを修正するシステムではない。
電子デバイスの活躍する場は、機械でカバーしきれない微小域や、よりスムーズな連続性を得るための制御、そして、人的な能力で補いきれない部分に限るべきだということを、あらためて実感した。コストが安いからといって機械的なモノに置き換えたり、基本性能の解明に努力せず、安易に追加装備して「安全に関して事足れり」と、満足するものではないと思う。われわれユーザーも、そこを理解すべきだ。

(文=笹目二朗/写真=峰昌宏/2002年2月)

【ESP作動のイメージムービー】



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