フェラーリと縁の深いボディ製作工場とそのオーナー、セルジオ・スカリエッティから名前をとった新しいフラッグシップ。左右フロントフェンダーの高い峰が、優雅にリアまでうねる。前輪後部からドアに至るボディサイドの深い“えぐり”がスタイリング上の特徴で、これは、1954年のパリサロンに展示された「375MM」−−映画監督ロベルト・ロッセリーニが女優イングリッド・バーグマンに贈った特別な375MM−−からの歴史的引用である。
とはいえ、ピニンファリーナは、単なるノスタルジーからデザインを決めたわけではない。
612スカリエッティのボディは、456よりひとまわり大きくなった。20cm近く長い4902mmの全長、全幅は1957mm(+37mm)、全高1344mm(+44mm)。堂々たる上屋を載せるホイールベースは、なんと35cmも延ばされた。プラス2を超える居住空間をもつキャビンを実現するため(と、エンジンの搭載位置を改善するため)である。
長い車軸間距離の弊害で、最新フェラーリのサイドビューが間延びした印象を与えることを嫌ったピニンファリーナは、過去の台帳から、みごとな解決策を探し当てた。豪華なグランドツアラー実現のための要件と名門のプライドを両立させるデザインコンセプトを。
大きくなったトップモデルは、しかしカバリーノランパンテのバッヂにふさわしい動力性能を得るため、相応に重くするわけにはいかない。そのために採られた方法が、1999年デビューの8気筒ベルリネッタ「360モデナ」で経験を積んだスペースフレーム構造である。アルミニウムの押し出し材をアルミの鋳造パーツで繋いで骨組みをつくり、やはりアルミのパネルを溶接とリベットで貼り付けることによってボディを構成する。
612スカリエッティの車重は1840kg(欧州仕様車のKerb Weight)。日本仕様の「456GT/GTA」が1860/1970kgだから、軽量化技術の霊験あらたか。内装ほか装備品を除いたホワイトボディの状態では、1割ほど軽いという。しかも62%もの剛性アップを得て。同サイズの“普通の”クルマと比較すると、「40%は軽い」というのがフェラーリの主張である。(つづく)
(文=webCGアオキ/写真=野間智(IMC)/2004年4月)
・フェラーリ612スカリエッティ(2ペダル6MT)【短評(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000015056.html