(エンジン+トランスミッション)……★★★★
かつて初代「セルシオ」がデビューしたときに、「回っているかどうかさえわからない」とまで評されたUZ系エンジンの静粛さは、その後、世の中全体がレベルアップした今日でも依然群を抜いている。アイドリングから中速域まではほとんど無音と言って良く、そもそもトルクが41.0kgmから43.8mkgに太ったせいで無理して上まで回す必要がないのだ。
さらに、ギアボックスが6段になったおかげで、D(6速)/100km/hがわずか1600rpmという異例なハイギアリングが可能になった。車重は1690kgに達するが、280psのパワーにはまだまだ余裕充分で、動力性能は申し分ない。
ただし、踏み始めの瞬間はスロットルが重いというよりはどこかむずかるような感触が残り、もしかしたらそうした単純な操作にも「VDIM(ヴィークル・ダイナミクス・インテグレーテッド・マネージメント)」(
前編を参照)が介入しているのではと想像させてしまうところがある。
シーケンシャルモード付きの6段ATは使いやすさの点でとても優れている。レバーをDから右(ドライバー側)に寄せれば即、それを兼ねた“S”ポジションになり、そのまま手前に引くと素早いシフトダウンが可能。さらに、咄嗟のときはゲートのクランクを無視していきなり斜め右下にガッと引き下ろす荒技もOKで、変速にストレスを感じることはまずない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
「クラウン」との歴然たる差は乗り心地である。シャキッとヨーロッパ車風になったはいいけれど、なぜか妙に細かいハーシュネスが感じられたクラウンとは対照的に、全体として伝統的なオーナーの好みにも合うソフトさはやはり心地よく感じられるはずだ。
それでもエアサス特有の若干ツンツンした感じが微かに認められるが、一般には無視できるレベルだから安心していい。無論、ダンパーを切り替えて“スポーツ”モードを選ぶこともできるが、そうすると途端に低速で荒さが目立つ割にはこれといったメリットがすくなく、多分にスペックのためのスペック然としている。オートレベリング付きのエアサス大型車とあって、姿勢のフラットさやダイブ/スクォットの小ささはさすがである。
当初、正直言ってあまり期待していなかったハンドリングが期待以上どころか、大袈裟に言えば新しい地平を拓くほど感銘的だったのは喜ばしいかぎり。この場合、主役は明らかにVDIMだ。とにかく、箱根のワインディングロードでは「これがあのクラウンか」と目を剥くほどの素晴らしさ。それもアンダーやオーバーがどうのといった旧来の基準では計り知れない異次元のものだった。
一言で言えば、乗り手がどんなにヘタクソでもまるで熟達したレーシングドライバーが模範を示したときのようにスムーズで、ラインが乱れないのである。極端に言えばドライバーのステアリング操作やスロットルの踏みかた、ブレーキのかけかたがたとえどうであれ、すべては曲がりたいように曲がり、進みたいように進んでくれるのだ。よくよく観察するとクルマ自身が1輪ごとにブレーキをオン/オフしたり、トルクを断続している微妙な感覚が尻を通じて伝わってくるのだが、全体としてはいい意味でそれらが渾然一体となっており、不自然さがまるで感じられない。まさに「マジック!」 と言いたいできだ。
ステアリングそのものもクラウン同様、電動アシストの常識を覆す自然さである。それでも敢えて★5つを付けなかった理由は、まさにその電子制御ゆえか、主として高速道路でレーンチェンジした際などに、一瞬フワッとフロントが浮いてあらぬ方に向きかけることがあり、直進アンダー気味のステアリングもやや戻りが強すぎて改善の余地があると思ったからだ。メルセデスのように意図的にダルにしてあるほうが、こうした性格のハイスピードトゥアラーにはかえって相応しく、乗っていても楽なのである。
(写真=荒川正幸、トヨタ自動車/2004年8月)