ロードゴーイングレーサーといっても、エクステリアはフェラーリやポルシェなどとはまったく別の線上にある。空力性能の向上という機能を最優先しながら、派手でも冷徹でもない。フロント/リアのグリルをメッシュとするなど、クラシカルなディテールを取り入れているおかげだろう。先鋭的技術と古典的装飾という、相反する要素がここではたくみに融合し、新たな魅力を生み出している。
フル4シーターのスペースを備えるキャビンもまた、いま風のクールさを持ちつつ、佳き時代のあたたかさが漂う。航空業界向けに開発された素材というテクニカルクロスの、渋さを含んだ光沢のおかげだろう。そこにレザーとカーボンファイバーを組み合わせて、大胆なのに軽薄ではない、むしろ重厚な空間を作り出している。
シートはテクニカルクロスとレザーのコンビ。座り心地は硬めだが、あつらえたように自分の体格にフィットし、とりわけ肩のあたりのホールド感が心地よい。そのシートにからだをあずけ、グランスポーツの文字が刻まれたメーターを目の前にして、左右のパドルを両手で同時に引いてニュートラルを出し、エンジンスタート。今度は右手だけを動かして発進する。(後編につづく)
(文=森口将之/写真=峰昌宏/2005年11月)
・マセラティ・グランスポーツ(2ペダル6MT)【短評(後編)】
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000017433.html