(前編より)長崎には、海と山しかない。平地というものが極端に少なくて、斜面の交差する線と海の縁を道が通っていくばかりだ。試乗のステージとなった大村湾は外海への出口に橋が架かっていて、佐賀方面に抜けるクルマが集中するから流れが悪くなる。せっかくのV8の実力を測るには、少々キビシい条件なのだった。それでも、V8の勇ましい音と迫力のある加速は、アクセルペダルを少し踏み込んだだけで味わえる。
ドロドロと細かくうなるような音がスッーと高まっていき、何やら金属が擦れ合うようなウィーンという高周波まで交じってくるのだ。快音ではあるが、ボルボに乗っているという頭があるから、つい違和感を持ってしまう。
スポーツモデルということではこれまでも「Rシリーズ」があったのだが、ずいぶん感触は違っていた。エンジンが素早く回転を増していき、それにつれて滑らかにパワーが盛り上がっていく様は、Rシリーズの2.5リッターターボのもたらす力感とは違って軽やかさが前面に出ている感じだ。
動力性能としては、1880キロのボディには十分なものだ。2.2トンの「XC90」でも強力な加速が得られていたのだから、当然である。アップダウンの多い長崎の道を、力強く駆け抜けていく。先代の4段から一気に6段に進化したギアトロニック仕様のトランスミッションも、滑らかな変速動作で心地よい。速さもあるし、エンジンのフィールも悪くない……しかし、なぜか一向にスポーティな気分に浸れないのはなぜだろう。どうやら、エンジン以外の部分がいかにも今までのボルボ然としていて、どことなくギャップを感じてしまうのだ。どっしりと安定したハンドリングは安心感をもたらすが、爽快さとはあまり縁がなさそうだ。コーナーを次々にクリアしていくことに歓びを感じる、という場面は訪れない。