(前編より)ドイツとフランスとベルギーにあたりを囲まれた人口45万の小国ルクセンブルグは筆者にとって初めて訪問する国だが、当然交通事情は周辺のヨーロッパ各国と変わりない右側通行。そこにロータスは全部で10台のテストカーを持ち込んでいた。その中から好きな1台を選べといわれ、右側通行でRhdというのは日本でLhdを乗るより違和感を覚えることは知っていたのだが、カラーリングを優先してあえてRhd車のシートに乗り込むことにした。
体が「エリーゼ」や「エキシージ」、あるいは「RD200」といったもっと狭いクルマに慣れたせいもあるのだろうが、ヨーロッパSの乗降性は確かに悪くない。サイドシルが広いのでスカートを履いた女性はちょっと気遣う必要があるだろうが、首を無理に屈める必要がないため年配のドライバーでも億劫に感じずに済みそうだ。
インテリアの眺めはちょっと豪華なエリーゼといったところ。トーボード以外はレザートリムとカーペットで覆ったというロータスの説明に嘘はないが、中心線に向けて軽くオフセットしたシートの配置、座面そのものは薄いが体をぴたりとホールドしてくれるプロバックス社のシートなど、雰囲気はまったくエリーゼと変わらない。
嬉しいのはエキシージSと異なり、インナーミラーを通じてまともな後方視界が得られること。実用性という点でヨーロッパSはこれまでのロータスのスポーツカーとは明らかに違う。唯一最大の難点はノンパワーのステアリングがごく低速でかなりの操舵力を必要とすること。
ロックからロックまで2.8回転するこのラック・ピニオン式ステアリングは、絶対的な重量が軽いことに加えてフロントタイアが175/55R17と細く、またキャスター角をエリーゼより立てるなどジオメトリー面での改良もあって、一般的な男性なら両腕で据え切りできる重さになっているが、「アウディTT」や「ポルシェ・ケイマン」など、ロータスが仮想ライバルとして挙げた実用スポーツカーと比べると、扱いやすさの点で不利なことは否めない。
もっともその一点を除けば、ヨーロッパSの実用性はかなり高い。何より嬉しいのが乗り心地の良さだった。
サスペンションアームはエリーゼとまったく同じという説明だったが、走り出した瞬間に違いがわかるほど低速域の乗り心地はソフトで、特にハーシュネスとバイブレーションの遮断性が大幅に改善されていることがわかる。
その印象は荒れた路面や高速道路に足を伸ばしてもまったく変わりない。絶対的なストロークは特別長いわけでもないのに、GTカーとして成立するだけのソフトな当たりと重厚さを実現したのは、エリーゼより100kg重いことももちろん大きなファクターだが、それ以上にコンプライアンス(ブッシュによる衝撃吸収性)の増加によるメリットと言えるはずだ。