最初に断っておくと、個人的には今の軽自動車規格についてはまったく賛成するつもりはない。税制上優遇するには今の軽は占有面積が大き過ぎるのでは?逆に言えば軽ならではのメリットを取り回しなどの面で実感できないし、660ccエンジンがその車体に対して燃費と性能のバランスを欠いているのも不満だ。少なくともエンジンは形式排気量自由で、燃費と環境性能で軽規格を決めればと思うのだが、どうだろうか。
と、そんな話を一旦脇に置いておくならば、ムーヴはその現在の軽自動車規格の中で屈指の完成度に仕上がっている。タイヤをこれまで以上にボディの四隅へと追いやったパッケージングのおかげで、室内は圧倒的に広い。使い勝手にもとことん配慮がなされている。それでいながらスタイリングにも十分華というか個性がある。
何か特別、革新的なことをしているというわけではない。しかし何も革新的だからすべて良いというわけではないのだ。革新的でなどなくても、真摯につくり込めばここまでのものができる。軽自動車の規格はもう煮詰まって……なんてこと、ムーヴを見たらまだ言えない。
走りのクオリティも高い。乗り心地や運動性能は普通車並みだとは言わないが従来の軽自動車の常識は軽く超えている。大した根拠のないその排気量等々の縛りの中できっちりトルクとパワーを絞り出したエンジンと、それを効果的に引き出すCVTの組み合わせは、こちらもやはり軽だからという我慢や妥協を忘れさせる仕上がりだ。
ムーヴに乗っていると、「これなら普通車じゃなくていいかもしれないな」と、本当に思えてくる。よって今、軽自動車を購入対象として検討している人には文句なしにオススメである。しかし、同時に我慢の要らない軽自動車には、優遇税制の根拠もないわけで。このムーヴ、あるいはいろいろな意味で波紋を巻き起こす1台と言えるのかもしれない。