「ロータス・ヨーロッパS」のシートにペタンと座る。太股の間から座面の下に手を伸ばしてシンプルなレバーを引くと、乾いた擦れた感触を残してシートが前に出た。
地下の駐車場から、四角く明るい路上の出口へ。月並みな重さのクラッチをつなぐと、すぐに月並みでない運転感覚を得た。
軽い。硬い。
後で車検証の記載と確かめると、前軸車重360kg、後軸車重640kg、合わせて1000kgだから超絶的に軽量なわけではないのだが、ヨーロッパSをお借りした直後のメモには、こんなことが書いてある。
「アルミのように軽い」
まことに頭の悪い記述である。
硬い、というのは、サスペンションのことではなく、ボディ。地下から道路へのわずかな距離の坂道で、すぐに不思議な強靱さを感じた。しならない。ゆがまない。
「さすがはアルミのバスタブ構造だ」と、今度はすこしはましな感想をいだいた記憶がある。
歩道を越え、ステアリングを切って公道に出る。パワーアシストはない。ヨーロッパSのフロントタイヤは175/55R17という控えめなサイズだが、据え切りや微速時のハンドルはさすがに重い。
しかしいったん動き出してしまえば、ひさしぶりに味わうダイレクトなフィール。胸が躍る。運転席からは盛り上がったフェンダーが左右によく見え、いつまでたっても車両感覚をつかむのが苦手なリポーターを安心させてくれる。同時に、ステアリング操作がフェンダーの下にあるタイヤに直接作用しているかの視覚的な錯覚を……、いや、実際に直接作用していないとエライことになるのだが、あたかもステアリングホイールのリムがそのまま前輪になったかのストレートな感覚がある。たちまち虜になる自分が可笑しい。