「いやぁ、自動車の生産なんてギャンブルですよ。だってたった1車種の失敗で、経営的に危険信号が灯っちゃうだから。ホント怖いですよね」
こう語るのは梅野勉フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン(VGJ)社長。2006年、晩夏。まだ暑さしつこく残る京都でインタビューした際の言葉である。
実際、VWにとってフェートンの失敗は痛かった。メルセデスSクラスのライバルを自ら名乗り、莫大な開発費に加え、旧東独の古都、ドレスデンにはガラス貼りの新工場を建設するなど巨費を投下。しかし販売はスタート直後からまったく振るわず、たちまちヨーロッパの巨大企業の足下を揺るがせたのである。VWに限らず、世の中のほとんどすべてのブランドが、プレミアム路線に突っ走った時代のことだった。
しかしVWは見事に甦った。高級化ひと筋から舵を切り、コアバリューである小型セグメントの充実を図ったのである。ゴルフやポロ・ファミリーの充実がそれに当たるし、ジェッタやパサートも各々が属するセグメントで、ベンチマークの役割を果たしている。
そんなVWブランドが生む最新のピープルズカーが、先のフランクフルトショーで正式デビューしたティグアンだ。トヨタRAV4やホンダCR-V、ニッサン・エクストレイル等と直接競合するコンパクトSUVであることは、ひと目見ればわかるだろう。
プレスカンファレンスの説明によれば、同カテゴリーの販売は世界的に好調に推移し、特にヨーロッパでは2002年に30万台だった市場規模が、今後倍増する可能性が高いという。ドイツ製コンパクトSUVといえばBMW X3という先駆者が思い浮かぶが、それに勝るとも劣らない性能と価値を、よりアフォーダブルな価格で大衆に提供することが、ティグアンに与えられたミッションだ。