ドライブシャフトを前に出した効用は、室内にもある。フロアが前進した結果、足元が広くなった。これは特に右ハンドル車で恩恵が大きい。
インテリアのデザインも量産車とは思えないほど凝っている。安っぽくみえる樹脂を廃し、金属を使いながらも、マットな部分と、細い線状の光沢部分を組み合わせる手法は、巧みな凹凸をもつデザインと共に高級感を嫌味なく醸している。
見てよし走ってよしの「A5」のなかで、筆者が一番好感をもったのは、ドライビングポジションがぴったり決まる点だ。シートのアジャストやテレスコピック/チルトのステアリング調整は、その移動幅が大きいこともあるが、基本的な位置関係が自然であるだけでなく、ボンネットの見え具合やドアと肩の高さ関係、ピラーの角度や位置関係、などなど真にジャストフィットする。
思うに、主義主張を言葉巧みに宣伝するのが巧いメーカーはたくさんあるが、アウディから受ける印象は、やはり技術志向であり物事をしっかり理解している優秀なドライバーが開発製作者である、ということだ。
正論と思われる説明があっても、実務を理解していない例もある。アウディは理論武装しなくとも実車に乗ればその意図ははっきり伝わってくる。余計な説明はいらない。「A5/S5」は、世界中のあらゆる量産車のなかで、頂点に立つクルマだと思う。このA5が600万円クラスであることを考えると、ラップするメーカーは顔色を失うはずだ。「日産GT-R」や「レクサスIS F」なども、差し当たってこのA5を見習うべきだろう。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)