ベントレーの販売・マーケティング担当役員のスチュアート・マックローは上機嫌だった。これまで度々宣言してきた通り2007年には1万台きっちりのセールスを実現し、このブルックランズのオーダーリストもほとんど埋まっているというから能弁になるのも無理はない。それにしても、わずか550台の限定生産モデルだというのに、豪勢な発表試乗会を催す真意はどこにあるのだろう?
フィレンツェ市街地を見はるかすトスカーナの丘のヴィラで開かれた試乗会のディナーの席で、マックロー重役に機先を制されてしまった。「一昨日の晩、北米のジャーナリストから質問されたんです。もうほとんど売れてしまっている車の試乗会をわざわざ開催する目的は?とね」それこそ、空港に迎えに来たアルナージTの後席で考えていたことだった。
それで、あなたはなんと答えたんですか?「もう売れてしまっているなら、それ以上PRする必要はない。そういうドライな考え方もあるでしょう。ただ私たちは、ベントレーが今何を考え、何をしているかをアピールすることは大切だと思っています。その時点での注文書の枚数にかかわらず、です。それからもうひとつ、待っていてくださるブルックランズのオーナーの皆さんへ伝えることも大事でしょう? あなたの選択は間違っていませんよ、とね」
さすがはヨーロッパにおけるレクサス・ビジネスを取り仕切り、高級車界の両極を知る男である。余裕の発言の中に、正しくオーナーに伝えてくれ、と品良く我々にプレッシャーをかけることも忘れていない。