背が低い4ドアHTの「トヨタ・カリーナED」が一世を風靡したのは1980年代後半から90年代にかけてのこと。「親不孝グルマ」と言われ、リポーター自身最初は「理念も何もないクルマ」と批判した覚えがあるが、モデル末期になると「カッコがいいから、それなりにいいんじゃないか?」と考え直すようになっていた。良きにつけ悪しきにつけ、クルマという商品にとって、何が大切なのかを考え直させてくれたものだ。それと同じ流れに乗ってメルセデスが「CLS」を登場させたとき、賛否両論が起きたのも思い出される。
今回デビューした「パサートCC」も、やはり背の低い4ドアピラードハードトップクーペ。ヨーロッパではこの種のクルマによって、比較的余裕があるユーザー相手に、新しい市場を開拓したいという気持ちが生まれているようだ。
ベースはその名前が示すように、実用性や合理性を徹底追及し、遊びの要素になど見向きもしていないパサートセダン。これを元に、一転して華やかなイメージを追求した路線にと開き直ったのがCCだ。
結論から言うなら、CCは予想外に洗練されて上質なクルマに仕上がっていた。その美点の大半は、土台となったパサートの高い完成度に依存している。だが、その生真面目さとは対照的に艶やかなルックスや雰囲気も大きな魅力だった。やはりどんな料理でも、素材が大切なのはもちろん、ソースによってそれはさらに引き立てられるということを、あらためて知らされた。