試乗した印象について伝える前に、簡単にラインナップを整理しておこう。基本形であるマセラティ・グラントゥーリズモは最高出力400psを発生するV型8気筒4.3リッターに6段ATを組み合わせたスポーツクーペ。続いて導入されたグラントゥーリズモSは、パワートレインを440psを発生するV型8気筒4.7リッターとトランスアクスルレイアウトの6段シーケンシャルMTの組み合わせに置き換え、よりファームなサスペンションや1インチアップの20インチタイヤでシャシーを強化したという、徹底的に走りに振った仕様である。
では新たに登場したグラントゥーリズモSオートマチックはといえば、エンジンは「S」用の4.7リッター440psユニットを使いながら、これに6段ATを組み合わせて、より日常性を高めたモデルと言える。この手のクルマが欲しい人は、大抵は一番良いグレードを求めるはず。しかし、それが必ずしも硬派な方向でなくてもいい。そのあたりをうまく突いたモデルと言えそうだ。
実際、その走りのキャラクターは「S」よりは素のグラントゥーリズモの延長線上にあると言えそうだ。つまり、それほど硬派には振られておらず、日常的なシーンでこそ真価を発揮する躾けである。
排気量4.7リッターのパワーユニットは7000rpmで最高出力を発生するというスペックどおりの圧倒的な高回転型。低速域ではやや線の細さを感じるが、実際には排気量があるだけに、トルク自体は決して不足していない。要は中〜高回転域の活発さが、そんな風に感じさせるのだ。