2009年フランクフルトモーターショーの巨大メルセデスブースで、主役の座を務めた「SLS AMG」。マクラーレンとのコラボレーションの末に生を受けた「SLRマクラーレンの実質的後継モデル」ともっぱら評判のこのモデルは、「AMGがイチからプロデュースした初のモデル」というのがウリの1台でもある。と同時に、「SLRのような“スーパーカー”ではなく、より現実的な“スーパースポーツカー”を狙った」と紹介される点も見逃せない特徴だ。ワンオフ的な作りとなることで極めて高コストになるカーボンファイバー製から、アルミスペースフレーム式へとボディ骨格構造を変更したのは、そんな両者の狙い所の違いを、最も雄弁に語る象徴的な出来事と言えるだろう。
スラリと伸びたロングノーズに、前輪後方に口を開く2本のフィン付きサイドエアベント。ちょっと立ち気味のウインドシールドに、なによりも特徴的なデザインを持つガルウイング式ドア……とくれば、誰もがこれは「往年の300SLへのオマージュから開発されたモデル」と感じるはず。しかし、カリフォルニアで開催された国際試乗会の場で確認をとって驚いた。実はこのモデルは、決して「300SLの再来」などという思いから開発されたものでは無いというからだ。
そんなSLSのそもそもの開発の発端は、2005年にAMGが新社長を迎え、「独自のコンプリートカーを作りたい」という思いが芽生えたことで始まったという。そこで社内で2シータースポーツカーの基本パッケージングを作り込み、親組織であるメルセデスにもお伺いを立ててみると「何か昔のSLに近いね」と話題になったという。すなわち、このモデルには当初はガルウイング式のドアなど想定されていなかったそうだ。その採用も含め、かつてのSLとのイメージのリンクが意識され始めたのは、すでに車両の基本パッケージングが完成された後のことであったらしい。「実はウチ(AMG)の社内では、名前も別のものが考えられていた」とも聞いている。