「SUVユーザーが高級ワゴンに戻ってくることを狙った」、東京お台場で開かれた「キャデラックCTSスポーツワゴン」の試乗会でこう聞いたとき、「それは賢明な戦略だ」と共感した。リポーター自身、どうして都会で今なおSUVがあれだけ走っているのか理解できないからだ。
特に女性が「ポルシェ・カイエン」や「ランドローバー・レンジローバー」「BMW X5」などに乗っている姿がとても多いが、見晴らしがいいのと他のクルマが譲ってくれることぐらいしか、都会で乗っていていいことはないように思える。
大きく邪魔だし、乗り降りも面倒、低い屋根の下には置けないし、大体燃費も悪ければ乗り心地も快適ではない。それなら適度なサイズのワゴンで充分だというのが数年来の持論だが、CTSワゴンの説明も「セダンと同サイズでセダン以上の機能を追求しつつ、燃費、サイズ、乗り心地の不満からSUVから離れてきたユーザーを狙った」となっている。
まあキャデラックは、「SRX」や「エスカレード」というSUVをちゃんと揃えている上での戦略だということは百も承知だが、それにしてもワゴンの復権は、“中型ワゴンこそ生活の友”として、長年私用車に選んでいるリポーターとしては歓迎である。
中型メルセデスやBMW、そしてレクサスらに対抗して2001年から送り込まれたミドサイズでスポーティなキャデラック、「CTS」は、最初こそ意余って力足らずというか、懸命に足腰を鍛えたのに全体の仕上げに緻密性を欠いたようなところがあったが、年々改良され、洗練されてきている。特に2007年以降の第2世代になると、ヨーロッパや日本のライバルに対抗できるだけの能力と、キャデラック特有の華やかさがうまくミックスされてきて商品力を増した。なかでもスモールブロック・シボレーV8を載せた、高性能版「CTS-V」などは、下手なヨーロッパ製ハイパワーサルーンよりも、遙かに魅力に富んでいる。
そこに登場したのがスポーツワゴンである。狙いは3つ。サイズはセダンを絶対に上回らないこと、セダン以上に個性的で斬新なルックスを与えること、そしてセダンですでに定評を得ているバランスの取れたダイナミック性能を維持することだ。だからこそ敢えて「スポーツワゴン」の名前が与えられたこのクルマ、短時間ながらもつき合った結果、個人的にはもっとも好ましいCTSだと思った。