■国営企業フォルクスワーゲン
いっぽうのフォルクスワーゲンは、北ドイツのニーダーザクセン州ヴォルフスブルク市に本拠地をおく。
当時のノルトホフ社長の戦略で、長年にわたりビートル生産の一本道を走ったが、70年代にビートルの販売台数が減少し、経営危機におちいった。商品ライフサイクルマネージメントを行わなかったことが原因といわれる。経済学の教科書にのる、悪い例の典型だ。
結局、1965年に既に買収していたアウトウニオン社(現アウディ)の技術を活かした、近代的なクルマ「ゴルフ」を1974年に発売し、難を逃れた。
前述の通り、1960年に「フォルクスワーゲン有限会社民営化法」により民営化されるまで、フォルクスワーゲン社は国営企業だった。この法律によってフォルクスワーゲン社は、元筆頭株主であるニーダーザクセン州の影響力保持などを理由に、「ひとつの株主はいくら株を持っても、議決権は最大20%に制限される」、という特殊な条件つきの株式会社になった。
敵対的な買収が多くなった現代でも、この条件があるおかげでフォルクスワーゲン社は買収される危機から守られてきたのだ。
しかし、2004年になると、この法律が問題になった。
自由経済をめざすEUは、ドイツ連邦共和国にフォルクスワーゲン法の変更を要求。裁判の結果、2007年内にフォルクスワーゲン法は崩れる見通しになった。実現すれば、同社が初めて自由経済の風を感じる瞬間になるだろう。
(中編につづく)
(文=廣川あゆみ/写真=廣川あゆみ/ポルシェ/フォルクスワーゲン)