■高級路線で、本業がおろそかに
このピエヒ社長時代、フォルクスワーゲン社は高級路線を追求し始めた。
本来、フォルクスワーゲンの高級部門は、アウディに任されていた。アウディは、80年代後半からダイムラーベンツやBMWと技術的に競争できるようになり、フォルクスワーゲンから独立した存在として、ドイツの消費者に高級ブランドとして認められるようになった。実際、消費者は、車台を共用しているフォルクスワーゲン「ゴルフ」よりもアウディ「A3」を高い値段でアクセプトしている。
フォルクスワーゲン・ブランドではこうはいかないだろう。
ピエヒ氏はさらに、高級車メーカーである「ベントレー」「ブガッティ」「ランボルギーニ」を買収した。
フォルクスワーゲン・ブランドでは、大型SUV「トゥアレグ」(ポルシェと共同開発)と、12気筒モデルをそろえるアッパークラスセダン「フェートン」を開発させた。
1001馬力の「ブガッティ・ヴェイロン」が話題になったことも、記憶に新しい。
同時に、ベーシックな大量生産車たる「ポロ」「ゴルフ」などはどんどん大きく、贅沢に。
ラインナップに“国民車”の座が空いてしまい、ドイツの自動車メディアは「国民車をつくれ!」と呼びかけるありさまとなった。
高級路線だけに力を注ぎ、ライバル他社がシェアを占めている分野、需要の大きいミニバン、ワゴン、カブリオなどに十分に対応していなかった。
フォルクスワーゲンの高級路線戦略は、ドイツでは全面的に失敗とみなされている。実際、筆者もドイツでW12のフェートンを見かけたことはない。クルマとしての評価は高かったとはいえ、ドイツの消費者がフォルクスワーゲン・ブランドの高級車を買うことはないらしい。
ブガッティ部門などで業績を上げているわけでもない。ここ数年、フォルクスワーゲンは戦略を見直そうとしているが、回復には時間がかかると思われる。
(後編につづく)
(文=廣川あゆみ/写真=ポルシェ/アウディ/フォルクスワーゲン)