お答えします。メーカーの人の言葉は、一種の自信の表れかもしれません。「最近の自動車は技術が向上しているからならし運転はいらない」なんていう人はたしかにいます。しかしたとえば私たちが普段はいている靴を考えてください。始めは硬くて履きずらく、徐々に馴染んできますよね。
クルマもある意味で靴と一緒だと思います。新車のエンジンを例にとっていえば、作りたてのほやほやのエンジンは実際の走行による「当たり」は付いていません。「当たり」とはエンジンがスムーズに回るようにシリンダーとピストンの摺動面で金属同士がひっかからずに動くようになることです。
新品のエンジンの摺動面は見た目はツルツルでも、実際はザラザラです。そこで、ならし運転をしてザラザラの面に徐々に負荷をかけることによって滑らかにしていくのです。滑らかになれば抵抗も少なくなり、エンジンがスムーズに動くというわけです。
いきなりエンジンを高負荷で回してザラザラの部分を「粗削り」してしまうと必要以上に金属が削られてしまい、クリアランスが大きくなります。そうなるとオイルの消費量も多くなります。同じ走行距離でメンテナンスのサイクルが同じとしても、将来エンジン性能や寿命が違ってくるということがあります。これはならし運転をはじめとする乗り方の差によるところが大きいといえます。
今回はエンジンにかぎって話をしましたが、トランスミッション、サスペンション、その他ほとんどの部分でもならし運転は必要です。
エンジンを作る機械(マザーマシン)は試運転に試運転をかさねて、機械のなじみと信頼性をえてからエンジンを生産します。もとの機械がならし試運転を行っているのに、完成品はならし運転がいらないなんておかしな話だと思いませんか。同じ機械なのだから。