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ホットハッチなんて要らないでしょ? (フォルクスワーゲン・ポロGTI)
(06.02.20)
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本質であり、付加価値でもある
フォルクスワーゲン・ポロGTI 5ドア(FF/5MT)
……249万9000円
兄貴分の「ゴルフGTI」が好調に販売を伸ばしている中、「ポロ」のラインナップにも「GTI」が加わった。付加価値性を求めたモデルかと思いきや、これは本物のホットハッチだったのである。
■
質高く練り上げられた走りっぷり
前口上で書いた、フォルクスワーゲンの言う輸入ホットハッチ市場が拡大しているという話は、ミニがますます販売台数を伸ばし、そして「ゴルフGTI」が日本のゴルフの3割を占めるほどの人気を獲得している今の状況を受けてのことに違いない。でも、それは突如としてスポーティな走りの魅力に目覚める人が増えたということなのかといえば、やはり否である。昨今の世情はむしろ逆と見たほうが正しいはずだ。
では、これらのモデルの何が人を惹き付けているのかというと、要するにその付加価値性ではないだろうか。生活に彩りを添えてくれるクルマが欲しいけれど、それは別にサイズアップを伴わなくてもよく、むしろ使い勝手は変わらないままに、より個性的なものが欲しい。単に実用的なだけでなく、何か秀でたところのあるクルマこそが望み。今、人気のホットハッチとは、そんなニーズに応えるプレミアムコンパクトカーの一形態だと考えるほうが自然な気がする。「ミニ」にしてもゴルフGTIにしても、スポーティだからというより、スポーティ性というプラスアルファの価値を持つこと自体が人気を呼んだのだ、なんて見方はあながち間違っていないはずである。
「ポロGTI」が投入されたのは、まさにそうして拡大を続けるホットハッチ市場だ。ゴルフGTIと共通のモチーフで仕上げられた内外装は、まさにそうした今のホットハッチユーザーの購買意欲を刺激するもの。一方、エンジンは先代「ゴルフIV GTI」譲りの1.8リッターターボを使うなど、中身はまあそれほど凝ってはいない。もしや、ブームに乗って急いで安直に作ったモデルなのか? なんて思われたとしても不思議じゃない。
ところが、実際にそのステアリングを握ると、そんなことが頭を掠めたことを反省してしまうくらい、質高く練り上げられた走りっぷりを披露してくれる。圧縮比は高め、ブースト圧は低めの1.8リッターターボエンジンは、それゆえにターボラグが小さく、使い古された言い回しだが、まるで排気量の大きなNAエンジンのよう。実際に速いのもそうだが、多少シフトをさぼろうがトルクがついてくるのが嬉しい。ちなみに、そのシフトはスイフトスポーツと乗り較べると、街中ではともかく攻めている時など、やや入りが渋く感じられた。距離を重ねるうちに多少は馴染むだろうか。
フットワークにしても性格づけは同様で、ヒリヒリするほど速かったり刺激的だったりはせず、基本的には安定指向の躾けと言える。だが、きちんと意識して操縦してやれば、どのようにだって思うままに走らせることができる。
【スペック】
全長×全幅×全高=3915×1665×1465mm/ホイールベース=2470mm/車重=1210kg/駆動方式=FF/1.8リッター直4DOHC20バルブターボ(150ps/5800rpm、22.4kgm/1950-4500rpm)/価格=249万9000円(テスト車=同じ)
■
エンジンとシャシー、実にいい塩梅
もっと熱くさせるのがホットハッチだろうという声もあるだろうが、ひっちゃきになって攻めるのではなく、心地よくスポーツドライビングを楽しみたいというオトナにとっては、このエンジンとこのシャシー、実にいい塩梅じゃないだろうか。さらに言えば、演出めいた刺激は人によっては好みに合わないという場合も起こりえるし、楽しめるシチュエーションも選びがち。何より飽きに繋がりやすいのも事実だ。
そう考えると、いつでもどこでも、それも長きにわたって、いい汗をかいて楽しめそうなこの走りっぷりは、実は本当の意味で一番、走りを真摯に考えているからこそという気もしてくる。低めのスタンスで、けれど狭苦しさとは無縁のドライビングポジションも、あるいはその表れと言えるだろう。
考えてみれば、ポロGTIのトランスミッションは5段MTのみという昨今珍しい設定である。まあ、これはまだこのクラス用のDSGが間に合わないという理由もあるが。さらに、ボディは5ドアだけでなく3ドアも選べる。これは惜しくも生産が終了してしまったルポGTIの層を引き継ぐためだろう。事実、3ドアの価格228万9000円と、ルポGTI(226万8000円)との差、実にたったの2万1000円という設定である。
そう、最初にホットハッチは付加価値だといったが、このポロGTIについて言えば、それは付加されたものではなく本質なのだ。中身も外観もゴルフGTIに倣っているけれど、そこはハッキリ違うところではないかと思う。売る側にとっても、きっとユーザーにとっても。それでいて、もちろん外観や内装、そして何よりGTIというネーミングにて、今求められる付加価値的要素もバッチリ備えているのだから、このポロGTIの商品企画は本当に巧いなぁと感心してしまうのだ。
(文=島下泰久/写真=高橋信宏/2006年2月)
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