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本質的な部分から改革を

トヨタ・ラクティスG"パノラマパッケージ"(FF/CVT)
……217万7700円
「ラクティス」とは、「run」「active」「space」を組み合わせた造語。この三つの要素がすべて高レベルならば、確かに「ホットハッチなんて要らない」はずだが、どうか。
■ パドルは「レクサスIS」と同じ?
結論から言ってしまえば、「ラクティス」の走りは、威勢の良いかけ声やこの『webCG』はじめ周囲の高評価から事前に想像していた、『もうホットハッチなんて要らない!』と思わせるほどスポーツ感覚あふれるものではなかった。いや、走りが悪いわけでは決してない。今回は比較のために連れていったクルマがあまりに良かっただけになおさら目が厳しくなったという面はあるかもしれないが、それでもまとまり具合は、むしろ積極的に良いと評せる。じゃあ何が不満かと言えば、要するにドライバーである僕をちっともホットな気分にさせてくれなかったということである。
ホットにさせる、まあつまり楽しいクルマだと感じさせる手段には色々あって、それはどんなかたちでも良い。大事なのは、楽しいクルマだと感じさせようと思っているか否かということである。思い入れやら個人の好みではなく冷静に評価して、ラクティスはその部分が今イチ希薄なのだ。
ロードホールディング性能に不満はない。背の高さもあってロール感は小さくなく、他の3台と同じような調子でステアリングをスパッと切り込んでいくわけにはいかないし、左右に切り返す時などは反応も遅れがちとは言え、グリップ感は常に保たれているから、丁寧に走らせてやればそこそこよいペースを保てる。動力性能も十分。フラットな特性の1.5リッターエンジンとCVTの組み合わせは、どこから踏もうがしっかりトルクがついてきて、即座に加速態勢に移れる。
自慢の7段パドルシフトは、何と塗装以外は「レクサスIS」と同じと思しきパドルの位置、タッチともに心地よく、またレスポンスも上々。ワインディングロードでは最初のうちこそ面白がってパタパタやってみるのだが、前述の通りフラットな特性のエンジンは特に手動でシフトしなくてもそこそこ走ってくれるので、じき使わなくなった。CVTやAT、あるいはDSGでも、マニュアルモードはなくたって問題なく走るものだ。それはラクティス1.3リッターにはパドルシフトが用意されないことからもわかる。つまり、自分の力でクルマの持てる能力を引き出すMTとは、やはりまったく別の概念のもの。使ってもいいけど大して意味はない。そんなものだから、ハッキリ言ってすぐに飽きるのだ。
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【スペック】
全長×全幅×全高=3955×1695×1640mm/ホイールベース=2550mm/車重=1170kg/駆動方式=FF/1.5リッター直4DOHC16バルブ(110ps/6000rpm、14.4kgm/4400rpm)/価格=165万9000円(テスト車=217万7700円/16インチタイヤ&アルミホイール/ディスチャージヘッドランプ/SRSサイドエアバッグ&カーテンシールドエアバッグ/HDDナビゲーションシステム/ETC=51万8700円)
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■ 「単に良い」より、明確な主張を
では何年か何か月か乗って、パドルシフトを使わなくなったラクティスには、それでも走りの楽しさに繋がる要素は残されているか。これは正直、疑問である。いいクルマだが楽しくはない。そういうクルマがあってはいけないなんて言うつもりはなく、ヴィッツやベルタなどはそれでもいいと思う。けれどラクティスの走りは、狙いどころからすれば、それらと一緒の味付けではいけないのでは?
単に良いというだけでなく、個性や主張が明確で、あるいは平均点を下回る項目があっても、代わりに飛び抜けたところを持つクルマ。トヨタには、そろそろぜひそういう領域へと踏み出してほしい。「ファンカーゴ」とは違う文法だが、こちらも目を見張るスタイリング、インテリアの高いクオリティ、そして何より素晴らしい広さを誇る後席やラゲッジに、そうした走りの魅力が加わったなら、それこそホットハッチは顔色を失うこと請け合いである。
ここまで、今のホットハッチはそのスポーツ性を付加価値として認められ、人気となっていると書いてきた。しかし、それには補足が必要だ。少なくとも今回の他の3台の場合、それらは付加価値になり得るだけでなく、紛れもなく本物だということ。付いていないモデルもあるラクティスのパドルシフトのようなものではなく、スポーツ性がそのクルマの本質の根幹を占める要素となっている。
だから、本当に当世流のスペース重視型コンパクトカーの中から、今のホットハッチに取って代わるクルマが出てくるとすれば、それは方向性をハッキリ見定めて、もっと本質的な部分から改革を実行したクルマだろう。たとえば「ホンダ・オデッセイ」に始まり、「マツダMPV」そして「トヨタ・エスティマ」へと波及したアッパーミドルクラスのように、それに近い流れは他のセグメントでは、既に現実のものとなっているのだ。
(文=島下泰久/写真=高橋信宏/2006年2月)
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