

●HDV-770はこんなナビ
現在のカーナビは、AVとナビの融合化に伴い多機能および高機能化への傾向が著しいが、ケンウッドは独自。一昨年、誰でも簡単に使えることをテーマに開発したオンダッシュ型のHDM-555を発売。そのスマートナビコンセプトを継承し、7型モニターを搭載する2DIN仕立てのAVナビとしたのが本機HDV-770だ。
ライバルが数多くの機種をラインナップに載せるいっぽうで、ケンウッドは実質上この2モデルで展開するシンプルな製品体制。この点でも独自性を押し通している。
HDV-770は、「カーナビで音質という選択。」というキャッチコピーを掲げているように、オーディオに大きなウエイトを置いた製品。音質重視設計を置き、同社の音質マイスターが音を練り上げ、音には自信を見せている。
DVD/CD再生は可能だが、CDの録音機能は未搭載。HDDナビ部は日常的なキーワードや親しみのあるアイコンなどを導入したカジュアルな構成が特徴。地デジチューナーは、12セグ/ワンセグ自動切り替えとワンセグ専用の2タイプを用意。

●「操作性」を評価すると
カジュアルな性格を反映した独特のメニュー項目は、「記憶から」あたりまでは理解できるが、「わかることから」「したいことから」になると意味不詳。実際に使ってみると前車は50音や住所、電話等、後者はジャンルによる検索であることがわかるのだが。やさしくしようとして逆にわかりにくくしてしまった印象をまぬかれない。
各項目に併せて表示されるアイコンは女性仕様ともいうべきもので、本機の性格をよく表しているように思われる。操作性はまずは良好な部類。タッチパネルの反応は可もなく不可もなくといった印象で、不自由なく自然に使える。ハードキーの数は少ないが使いやすい部類。スクロール時の地図切れは発生しないが、微調整はやや難しい。

●「地図」を評価すると
VGA画面に合わせて作り込まれた各社のトップグレードナビを見た後で、本機の地図に接すると、さすがに違いを実感せざるを得ないが、単独で使っている限りではさほど不満を覚えるようなことはない。VGAモニターでないため画質も粗い。
しかし肩に力が入っていないこの作りは、自由な感覚があって悪くない。カジュアル仕様のナビ画面としては、上手いまとめ方をしているように思われる。ただ文字表示も少なく、地図から得られる情報量は多くない。窓枠形式の2画面表示は、部分拡大といった趣きながら、ベース地図が完全にカットされないため、広々とした感じを与えて好印象。
市街地図の収録エリアは、地方でもかなり広く、充分な実用性を備えている。

●測位 川崎
ミスしても素早く復帰する対応力
ケンウッドのナビには、軌跡表示機能が搭載されていない。長年にわたってナビを使い続けている人でも、自車の軌跡によって大きなメリットを得たというケースはほとんどないことだろう。
こうした点からすると、手軽に使えることを前提に開発された本機HDV-770が軌跡表示機能を外したのは頷けないことではないのだが、ここでその足取りをお目にかけられないのは残念。ここでは、コース走行時の概容と印象を御紹介しよう。
コースの走り始め、首都高速下の側道状の一般道をクランク状に走り、続いて首都高速に乗るかと見せかけて実は側道に進入する部分。ここでは、なかなか安定した測位ぶり。地図が簡素で描き込みが不足がちの造りであるため、リアリティに欠けるところがあるのは事実だが、測位そのものはあまり問題になる部分は見られなかった。
続いて、首都高速から少し離れて右折する地点。ここでは、画面表示系の関係なのか、少しばかりぎこちない動きを見せたものの、的確に旋回して高速沿いの道に進入。そのまま東進を開始したが、少し走ったところでいきなり高速に吸引され、さらに南側の側道を走ってしまった。この現象はごく短時間で終息、すぐに高速北側の正しい位置に復帰したが、やや残念な結果ではある。
東端部での北への針路変更時、実車と自車マークの前後距離のずれはないかと注意したが、そういった現象は皆無。ミスを起こしても素早く回復する復帰性能に優れたナビのようだ。測位重視モデルのようにはいかないが、こうしたかなり困難な状況下でも、実用を損わない性能は確保していると判断していいだろう。
後半は大過なくコースをトレース。道を捉えて離さないといった安定感には欠けるところがあるものの、危なげない測位性能を発揮した。


●測位 千葉そごう
カジュアル・ナビには過酷すぎた?
かつてのナビは、一部モデルを除いて、道路へのマッチングが強すぎるために、“道離れ”の能力に問題ありといわざるをえないものが少なくなかったが、最近のナビはそのようなことはない。クルマが道路から駐車場などに入れば、自車マークもすんなりと道を離れてくれる。
ケンウッドのHDV-770は、今回のテスト機の中では最もカジュアル志向が強い製品だが、そうしたナビであっても、実用性に大きく関わるこういった部分の性能が着実に向上しているのが最新ナビの強味である。
HDV-770も、何らためらうことなく駐車場前の道に別れを告げ、駐車場に向かった。続く螺旋の上昇部分で、しかし早くも測位に乱れが発生。一定の舵角で旋回する車両の動きについていけず、自車マークと自車位置が次第に乖離。ついに自車マークは進むべき方向を見失ったかのように勝手走行を始め、停車位置では駐車場の北東方向にあるJR千葉駅の路線に突っ込んだ形で停まってしまった。
しばしの停車後の下りでは、自車マークは線路上で回転を開始。車速と方位がまったく噛み合っていない状態が続いた。その後、車両がさらにコースを走行すると今度は南進。駐車場の南側で回転を始めてしまった。テストカーは続いて線路沿いの道を出口に向かって西進するのだが、自車マークはその位置を正確に捉えることができず北方に移動。クルマが出口に到達して証拠写真を撮った時点で、自車マークはモノレール千葉駅の東側に位置していた。
カジュアル派ナビにとって、状況があまりにも厳しすぎるという側面は確かにあるものの、この結果はやはりいただけない。もう一段のレベルアップを望みたいところだ。GPSを受け始めてからの正しい位置への復帰はそれほど遅くはなかった。

●「検索」を評価すると
高機能を売り物にしたナビではないが、検索方法のバリエーションは今回、同時にテストした他社製品とさして変わらない。ただ検索をよりスムーズに進めたり、候補の絞り込みや表示などを行なう際の小技のきかせ方が、本機の場合は少ないように感じられる。検索結果の画面で住所表示が行なわれるだけでも、使い勝手はずいぶん違ってくるに違いない。
ユーザーの感覚にもよるのだろうが、「したいことから」に代表されるメニュー項目は違和感を禁じえない。「理容・エステ」などの項目が比較的浅い階層で出てくるのも、男性ユーザーにとっては抵抗があるだろう。ただデータの鮮度はかなり高い部類で、ヒット率、ピンポイントの確度もかなりの水準を保っている。

●「ルート探索」を評価すると
各社の現行トップモデルは、新手の機能で迫ってくるが、そういった製品と比較すると本機は簡便そのもの。時代を少し遡ったかのような印象さえ受ける。
ルート探索に要する時間はHDDナビとしては長めで、待たされる感覚なきにしもあらず。探索したルートの結果確認も地図が小さすぎてよく判別できない。こうした作りは、買物や近場のドライブといった使い方を想定しているためだろうか。
道選びは、「標準」時には本機の性格を反映するかのように国道や幹線道などの幅の広い道をつなぐ、走りやすさ優先志向。他の探索条件でも冒険するような傾向はほとんど見られないが、場所によってはところどころで気の利いた経路を示すこともあった。

●「ルート案内」を評価すると
マニアックな性格を極力排したナビながら、本機のルート案内は意外や細かいところにも配慮が行き届いている。
そのひとつが画面上部に表示される走行中の道路名称表示。運転時に役立つ情報だけにこの表示はありがたい。同じく画面左上に小さく現れる合流の表示も親切だ。一般道の交差点拡大図は、大規模交差点の明瞭なイラストと、小さな交差点で表示される模式図の拡大図ではクォリティに大きな違いがあるが、模式図のほうも3D表示もできるなど見せ方が工夫されており、やや頼りなげな描き方ながら、交差点付近の道のつながり方も比較的よくわかる。
VGA画面ではないため、他の上級機のように一瞬で多くの情報は読み取れないが、不足感はさほど感じない。

●「細街路探索」を評価すると
ケンウッドHDV-770が引いたルートは、新青梅街道、山手通り、大久保通りとコの字形に幅広い道を走り右折、北進して目的地に向かう経路。きわめてオーソドックスで理にかなっている。大久保通りを右折した後の北進路もちゃんと細街路であることを示す青色になっており、道路データもしっかりしているようだ。この表示なら、ドライバーは北進する道が細街路であることをあらかじめ認識できるため、大久保通りを右折した後はゆっくり走らなくてはいけないと考えることだろう。
通常の探索はやや物足りない部分もあった本機だが、細街路探索においてはイクリプスほどの切れ味はないものの、信頼できる性能の持ち主のようだ。
