特別なキャデラック

「CTS」を名乗りながら、ノーマルモデルとはまるで別物のフロントマスク。クロームメッシュのラジエターグリルはバンパー以下が際立って広く、ボンネット中央の膨らみも大胆だ。ノーズに収まるエンジンは、どれほどのパワーを絞り出すのか? キャデラックが誇るハイパフォーマンスセダン「CTS-V」を目の前にすると、そんなことを考えずにはいられなくなる。

圧倒的なパフォーマンスと豪華さを見事に両立したCTS-Vは、キャデラック「Vシリーズ」の最新モデルである。卓越した性能が自慢のVシリーズは、ハイパフォーマンスカーの開発を一手に引き受ける「ゼネラルモーターズ パフォーマンスディビジョン」がその技術と経験を注ぎ込んだ特別なモデルで、2004年の初代「CTS-V」を皮切りに、2006年には「STS-V」と「XLR-V」を追加。そして2008年には、フルモデルチェンジしたCTSをベースに、2代目CTS-Vが世に送り出された。なお、2010年12月には「CTS-Vクーペ」の発売も予定されている。

想像を超える力強さ

そんなCTS-Vを特徴付けるのが、驚異的なパワーを発生させる6.2リッターV8エンジン。「LSA」と名付けられたこのパワーユニットは、伝説の“スモールブロック”V8をベースに、イートン製のスーパーチャージャーを搭載するなど、独自のチューニングを施したもので、最高出力564ps、最大トルク76.1kgmの性能はキャデラック史上もっとも強力なスペックである。これに組み合わされるのが、6段AT。ステアリングホイール裏のボタン操作で、自在にギアをアップ/ダウンできる「タップシフト」が備わる。

さっそくエンジンに火を入れると、低く太いエグゾーストノートがキャビンに響き始めた。そしてアクセルペダルに載せた右足に軽く力をこめると、CTS-Vは想像を超える力強さで発進した。この余裕こそが大排気量エンジンの醍醐味(だいごみ)。走り出せば、終始涼しい顔でクルマの流れをリードできるから、混雑する都心であっても、ゆったりとした気分になれる。

もちろん、これは実力の片りんにすぎない。行く手を阻むクルマがいなくなったのを見計らいアクセルペダルを踏みきると、背中をけ飛ばされるような感覚とともに、レブカウンターの針が6200rpmのリミットまで駆け上がる。スーパーチャージャーは高回転が苦手と思われがちだが、少なくともこのエンジンにはあてはまらないようだ。

鍛え抜かれたシャシー

これだけのパワーを確実に受け止めるには、優れたシャシーが不可欠。CTS-Vには、4輪のダブルウィッシュボーンサスペンションに、瞬時に減衰力が制御できる「マグネティック ライドコントロール」が与えられ、また、4輪にブレンボ製ブレーキが装着される。注目は、「スポーツカーの聖地」として知られるドイツ・ニュルブルクリンク北コースをはじめ、ヨーロッパやアメリカのサーキットの走り込みにより徹底的に鍛え抜かれたこと。そのかいあって、マグネティック ライドコントロールを「スポーツモード」に切り替えると、姿勢変化を抑えたダイナミックなハンドリングが楽しめる。一方、「ツーリングモード」なら、スポーツモデルであるのを忘れてしまうほど快適なドライブを楽しめるのだ。

ワインディングロードでスポーティな走りを堪能したあと、ハイウェイをクルージングしながらあらためてコックピットに目をやると、ブラックのセンターパネルと、ステアリングホイールやシフトノブ、ドアトリムなど各所に施されたスエード調のファブリックが実にスタイリッシュで心地いい。セダンの実用性はそのままに、飛ばしても、流しても、最高の時間が手に入るCTS-V。スポーツセダンのひとつの理想がここにある。

Cadillac CTS-V
Cadillac CTS-V
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