JAGUAR
04.Impression of XK
JAGUAR XK LUXURY/XKでなければならない理由/世の中には数多くのスポーツカーが存在する。しかし「XK」ほど、その背後の社会を色濃く宿したクルマはない。だから唯一無二の存在であり続ける。われわれが「XK」に引かれる理由もそこにある。
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英国文化を享受する魅力

初めて「XK」ジャガーを体験したのは40年以上前、1960年代後期のパリ、それも初夏の夜だった。知り合いの建築家が駆る「XK150フィクストヘッド・クーペ」の助手席で体験した。速度を上げるとともに、長いノーズに切り裂かれた、パリ特有の乳白色の照明が、真っ黒なボンネットの上に反射し、ルーフに向かって一気に流れ去る。6気筒の爆発音が、石畳や古い建築物に反響し、赤い革シートを通じて身体にその鼓動を伝える。  そのとき、初めてヨーロッパの深さも重さも奥行きも、そして歴史の豊かさを思い知らされた。さらにはクルマが与える異次元の身体感覚を知った。すでにあの頃、XKはより新しい「Eタイプ」に進化していたし、ロンドンは革新的な若いファッションで埋め尽くされていた。だがそれでも歴史的重層性の上に輝いていたパリは、依然として文化においてヨーロッパの中心だった。そしてEタイプよりもさらに英国的な古典感覚を発散していた150は、単なるスポーツカーという存在を超えて、まさにヨーロッパ近代文明の集大成であるように思えた。

もちろん、ヨーロッパにはフェラーリもあればポルシェもある。XKよりも高度な技術と高い性能を持ったスポーツカーは数多くある。だが、今日においても、XKジャガーほど背後の社会や文化を直接ドライバーに感じさせてくれるクルマはない。それを見、触れ、そして操っていると、明らかに固有の文化体系に基づいて作られたものに接していることを感じ、その文化を自分も享受しているように思えてくる。それがXKの魅力だろう。  18歳でベストセラー小説をものにして一躍天才少女としてデビューしたフランソワーズ・サガンが、「XK120」を狂ったように飛ばしたのも、ショールームに置かれた「Eタイプ」に一目ぼれして、即座に「オレのクルマだ」とフランク・シナトラが叫んだのも、XKの中に他のクルマでは求め得ない特別の「何か」を感じたからに他ならない。XKというのは、何かとは違った特別な存在なのだ。

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