JAGUAR
04.Impression of XK
JAGUAR XK LUXURY/XKでなければならない理由/世の中には数多くのスポーツカーが存在する。しかし「XK」ほど、その背後の社会を色濃く宿したクルマはない。だから唯一無二の存在であり続ける。われわれが「XK」に引かれる理由もそこにある。
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堅くて柔らかい新しいジャガーライド

06年にデビューし、09年にマイナーチェンジを受けたXKのボディは、Eタイプの伝統を引き継ぎ、それを現代風に解釈したものと通常は表現される。だがむしろ反対に、現代のスポーツカーとしての理想形態を突き詰めることを最優先してデザインし、その課程で伝統の造形言語やモチーフを利用し生かしたというべきだろう。  楕円の開口部から始まる長いノーズから、豊かでエレガントに引きずったようなリアフェンダーまで、全体のシルエットはまさにXKジャガーの文法通りに見える。だが実際のプロポーションや縦横比は、現代の高性能車としての要件を満たすために大きく変化しているし、最新の空力を最優先して取り入れている。

それはインテリアも同じで、ジャガーが代々持っていたオールドワールド的な居心地の良さを継承し、ウッドと本革を多用した室内には、間違いなくジャガー特有の空気が流れている。だが子細に観察するなら、その室内を構成するすべてのものが最新の思想に沿って設計され、先端の技術と情報工学を最優先してデザインされ、使われていることが分かる。だから基本的にはとてもロジカルで明快だ。  奇妙な表現だが、路上のXKは堅くて柔らかい。ソリッドであるとともにソフトでもある。アルミボディはこの優雅なクーペに堅牢(けんろう)さと同時に軽さを与え、これに緻密にチューニングされた足まわりが奏功した結果、XKは他のクルマでは感じられない特異な移動感覚でドライバーを迎える。常にしなやかでいながら繊細に反応する足まわりが、軽い一方でシェルのように剛性感が高いボディを、驚くほど俊敏に制御し、ドライバーの手のひらの感覚を読み取ったかのように即答する。それでいながら、同時にボディが中空を漂うような、気持ちのいいライド感覚が生まれている。この堅くて柔らかい感覚、それこそ新しいジャガーライドなのだろう。

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適度な重さを持ったスロットルと、レスポンスのいいパドルシフトを操れば、5リッターのV8はドライバーの意思に即座に応じてさまざまな貌(かお)を見せる。ときには豪快なノートとともに、駆動輪であるリアホイールの少し前に位置するドライバーの背中を、それこそ脅すがごとく一気に押し出すような加速も示す。またときには完全に裏方に徹して、静かにハミングし続け、平和な移動空間を演出する。  「柔らかな高性能」あるいは「優美なハイテク」。XKジャガーはそんな感覚を持ったクルマである。それは紛れもなく、歴史の重層性の上に載った感覚なのだろう。やはりこのクルマは、世界でも最も特異なスポーツカーだと思った。

JAGUAR XK 5.0 COUPE LUXURY LIMITED

JAGUAR XF 3.0 LUXURY

<主要諸元>
全長×全幅×全高=4790×1895×1320mm/ホイールベース=2750mm/車重=1730kg/駆動方式=FR/5リッターV8DOHC32バルブ(385ps/6500rpm、52.5kgm/3500rpm)/価格=1200万円