スバルのクルマのつくりかた ~走りのこだわり

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シャシーのセッティングにあたって、ドライバビリティーや性能のとりまとめを担当した車両研究実験統括部の菅沼昇由主事は、「新しいDITエンジンを搭載するにあたっては、フロントの重量増対策がポイント
だった」と語る。

「新しい直噴エンジンでプラス10kg、新しいリニアトロニック(CVT)でプラス20kg、フロントが計30kg重くなります。そのためには、抜本的
な対策が必要でした」

シャシー設計部の片海哲哉氏が、具体的な対策を語る。「さまざまな計算、それに基づく実験から、横剛性を20%上げれば楽しいハンドリングが実現できることがわかりました。そこで、車体とサスペンションの取
り付け部分から剛性アップを図りました」

まずサスペンションをボディーに取り付けるクレードルフレームに溶接を追加。また、リア側のサブフレームをさらに強固にボディーへ取り付けるために、サポートサブフレームという部品を追加して、ボディーの横剛性アップを図った。菅沼氏によれば、「2.0GTDITは、300psというパワーもあって、ライトウェイトスポーツのように走るようになりました。先日ディーラーのセールスの方に乗っていただいたら、みんな笑顔で降
りてきたんですよ」。

面白いのは、こうした改良をトップモデルの2.0GTDITだけでなく、
すべてのグレードに施していることだ。菅沼氏は続ける。「B4/ツーリングワゴンで23φ、アウトバックで24φと25φだったフロントのスタビライザーを、全車26φに引き上げました。それから全モデル平均でリアのスプリングを5〜10%柔らかく、ダンパーも縮み側を
20〜40%柔らかくしつつ、伸び側を20〜40%硬くしました」

こうすることで、リアの接地感が上がり、路面からの突き上げとロールは減少するのだという。片海氏によれば、「導入2年でリアにピロボールブッシュを入れた時に操安性が1ステップ上がったと評価されました
が、今回で2ステップ上がったと断言できます」とのことだ。

新車を投入してから3年、ここまで地道に手を加えていることに感心していると、菅沼氏は「他社はわかりませんが、スバルではよくあること
ですよ」と打ち返した。
「丁寧に磨いて育てる、というのは初代レガシィの頃から変わらないですね。パワステのセッティングだとかブッシュの硬度だとか、いつもああでもない、こうでもないとアイデアを出し合っています。そうそう、今回もホイールを1本あたり1kg軽くしたら、かなり効果がありましたね。
まぁ、所帯が小さいからできることかもしれませんが(笑)」

そういえば、熊谷PGMも、「開発や実験のスタッフに、もうそれぐらいでいい、どんだけお金を使うんだと言いたくなる時もありました(苦笑)。
でも、社風なんですね。私が若い頃も同じでしたから」と語っていた。
エンジニア各氏の話を聞くことで、「スバルらしさ」というものが見えてきた。第一に、「スバルらしい」クルマとは、愉しく安全に走れるクルマである。そしてそうしたクルマを造るためには妥協をしないことが
「スバルらしさ」なのだ。