スバルのクルマのつくりかた ~安全へのこだわり

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2008年のデビュー後もEyeSightは進化を続け、2010年にはEyeSight
(ver.2)へとバージョンアップしている。最大の変更点は、プリクラッシュブレーキが30km/h以下の速度なら衝突回避する点(ただしステレオカメラの認識状況や、路面や車両の状況によっては、衝突被害軽減となるケースもある)。またプリクラッシュブレーキアシストを追加し、前方のクルマや障害物に衝突する可能性が高い時にブレーキを踏み込んだ場合、ブレーキを踏む力が弱くてもフルブレーキの状態にまでアシストする。「事故による被害軽減」から「衝突事故の回避」へと、EyeSight
の性能はひとつ上のステージに移ったと言える。

2006年の入社以来、一貫してEyeSightにかかわってきたという加藤氏
は、今回の進化は「非常に実のあるもの」であると語る。
「まず前方の車両や障害物を認識、解析するソフトが大きく進化しています。早いタイミングで前方の車両や障害物を認識することで、余裕をもって細かい情報まで解析できると言えばおわかりいただけるでしょ
うか」

加藤氏によれば、「プリクラッシュブレーキは、ドライバーの回避操作をうながすため弱い自動ブレーキをかけ、それでも回避操作がない場合には、強いブレーキが作動する」とのことだ。そして今回、「弱」のレベルを少し上げた。つまり、もっと強く効くようにセッティングを変更した。またプリクラッシュ制御により停止した後もブレーキを継続することで安全
性を向上させている。
「全車速追従機能付クルーズコントロールの最大ブレーキまで、初期の弱いブレーキの効きを強めています。ええ、新旧のEyeSightを比較してい
ただけばすぐにわかるぐらい強くなっています」

「弱」のレベルを上げたのには、より大きな減速Gを体感することで、ドライバーが危険に気付き、自ら事故を避ける行動をとってくれることを期
待しているのだ。

「プリクラッシュブレーキの性能はどんどん上がっていますが、できれば使われないのがベストです。性能は上げつつ、できるだけ使われないよう
にするという、なかなか難しい技術開発です(笑)」

今回のEyeSightの進化を具体的に感じられるのはどのような場面だろう
か?
「全車速追従機能付クルーズコントロールに関しては、前方の車両や障害物をとらえるタイミングが早くなり、先行車両に追いついた場面で安心感をより感じることができると思います。またアイドリングストップ機能と連動させたことから、前方車両に追従して停止した際、ドライバーがブレーキを踏まなくても、エンジンが停止します。再度発進操作をすれば、再び
エンジンがかかり、前方車両の追従を継続します」

加藤氏は、2006年の入社以来、一貫してEyeSightに携わってきた。「スポンジ製のターゲットを使ってプリクラッシュブレーキの実験を行うのですが、最初はスポンジのターゲットの作り方から手探りでした」と笑う。そして、
「さまざまな路面、勾配、タイヤの摩耗具合、積載重量などなど、EyeSightの精度を上げるにはあらゆるシチュエーションを想定してテストするしか
ありません」と続けた。

「大事なのは衝突回避の性能の数字ではなく、ユーザーの安全に寄与するかどうかです。常に安全技術に対して切磋琢磨(せっさたくま)し続けます」。
加藤氏の言葉の端々から、実直な“技術者魂”が伝わってきた。