Route2 「S60 T4」で冬の日本海をめざす

ボルボは「出かけたくなるクルマ」

3/4

高速で直進状態を保つためには微舵(びだ)修正も必要である。ヒトの運転にケチをつけるわけではないが、その頻度や舵角については、ひとそれぞれに個性がある。S60 T4の標準タイヤはミシュランであるが、今回はヨコハマのスタッドレスがついている。輸入品と国産タイヤでは路面キャンバーが異なるために、構造的な細工にも少々違いがある。

タイヤだけ変えると、そこがわずかながら影響する。国産タイヤは左側通行を想定しているから、ほんの少し右に流れる傾向を示す。そこで修正舵が必要になるわけだ。

またボルボには安全装備の一環として、車線を外れるとブザーで知らせてくれる装置「レーン・デパーチャー・ウォーニング」がある。わき見や居眠り運転などを警告するためのものだが、筆者はいたずらにヨーを発生させるのを嫌って、修正舵は最小にとどめ、緩いカーブなどの修正は白線を踏んでもいいからRを大きく取ろうとする。そこで、ブザーが鳴ってしまうこともままある。

この警告音を鳴らすまいと舵の修正をするとヨーが発生してしまい、例えば眠っている後席の乗員などは、ヘッドレストに頭をつけているので、切り返しの微妙なG変化で頭が揺さぶられて不快に思うこともある。こうした機能がどこまでを許容範囲とするかは、開発担当者の心得にかかっていると言えるだろう。

さて、そろそろ最初の宿題の答えを考えなければならない。ワゴンの空間的な広さは、確かに有効だ。室内空間は広い方がゆったりとくつろげる。シートそのものは、折り畳んで使うことも想定されるワゴンは比較的平板であり、セダンの方がしっくりとフィットする。セダンは広さで一歩ゆずるが、囲まれ感があることは守られているかのような安心感に通じる……。

一方、運転席での感想としては、やはりセダンの方が重心高も低く動きも敏しょう。ドライバーの立場からは、セダンの方が快適と言いたい。しかし個人的にどっちを選ぶかとなると、ワゴンを採る。たとえ年に数回でも、大きな室内空間をありがたいと思う状況があるからだ。

最後に今回の燃費について。往路は東京・神田から富山・氷見まで679.6kmを走り、満タン法で13.3km/リッター。630.5kmの往路は13.1km/リッター。全行程1310kmの平均燃費は、13.2km/リッターだった。

カタログ上の燃料タンク容量はV70よりやや少ない67リッターだが、燃費がいいので実際の航続距離はS60のほうが長かった。2度の給油の際には、いずれもゲージの上で5分の1ほど燃料が残っていた。

運転しているほうは、一日700km走った程度ではまだまだ物足りない。帰るとすぐまたどこかへ行きたくなってしまう――それが、ボルボというクルマなのだ。

(文=笹目二朗/写真=荒川正幸)

img_spec

bnt_spec

笹目二朗 ささめじろう

笹目二朗 ささめじろう

1945年生まれ。自動車メーカー勤務を経て、自動車専門誌『CAR GRAPHIC』の編集者に。現在はフリーの自動車ジャーナリスト。技術的知識に基づいた、歯に衣着せぬ論評で知られる。ボルボ関連の著書としては、『バルト三国をボルボで走る バルト海沿岸の国々をめぐるクルマ旅』(エイ出版社)がある。