運転が楽しめるボルボ

1/4

ボルボに乗るとなると、「ちょっとその辺をひと回り……」程度の試乗では物足りない。今回は一泊してしっかり長距離を走れるチャンスが与えられたので、和歌山へみかん狩りに行くことにした。

クルマは「V70 T4 SE」。大きなワゴンボディーを1.6リッターの小排気量エンジンで運ぶ。といっても、180psあれば十分だ。いまどきの高性能車は、高出力であっても、額面通りには回せないほどパワーがあり余っている例も多く、電子デバイスですぐオリに閉じ込められてしまう。速度制限もあって、ハイパフォーマンスカーが存分に実力を発揮できない日本の道路環境であっても、このV70 T4ならば能力を使い切る楽しさを味わうことができる。

ボルボV70 T4は究極の動力性能をうたうモデルではなく、ゆったりしたワゴンの室内空間がもたらす居住性や快適性をよろこびとするクルマではあるが、昔のボルボがたびたび言われた、お堅い紳士が好むような大味で退屈なだけのクルマとは違う。

例えば、新東名高速道路を淡々と流していても、その繊細な乗り味を味わうチャンスは常にある。V70 T4のギアボックスは、2ペダルのオートマチックながら、2体の湿式クラッチと6段のギアを備えるもの。動力の伝達にトルクコンバーターは介さない。通常の加速時には、同乗者の気付かぬままスムーズに変速が行われるが、定速走行に移っても油圧クラッチはつながっているから、MT車のようにエンジンとタイヤが直結しているという感触が得られる。

新しい高速道路の路面はとても滑らかだが、橋などのジョイント部分にはわずかな段差があるし、緩い凹凸も存在する。AT車に慣れたドライバーや無頓着な人ならば看過してしまうレベルかもしれないが、日常的にMT車に乗っている筆者は、この微小の目地段差などのショックに対しても、わずかなスロットルのオン/オフで車体への入力を減らし、極力姿勢をフラットに保ち、ブッシュをたわます助力を加える。キャッチボールの時にちょっとグローブを引くのと同じ要領だ。

しかし、このほんのわずかな操作が、ルーズな普通のAT車にはむずかしい。対してV70 T4はこれができる。微妙な操作でクルマをコントロ−ルすることは、ドライバ−にとってひそかな楽しみである。

筆者は、「すぐに眠くなってしまう」という点でもAT車が苦手だ。Dレンジに入れっぱなしで変速作業をしないとか、単に体を動かさなければ楽でよい、というわけではない。書き出せばキリがないが、こんな風に常時神経を集中させて運転に臨むなら、睡魔なんかやってきたりはしないのだ。