Route1 「V70 T4 SE」で実り豊かな紀州へ

長距離ランナーの資質あり

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和歌山・有田のみかんは有名だ。その畑は平地にも広がるが、多くは山の斜面を利用した、石垣のある段々畑になっている。日の光をたっぷりと浴びることができて、水はけにも優れているため、おいしい有田みかんが生まれるのだそうだ。みかんは、大きめの玉が流行(はや)った時代もあったが、今は小さい玉ほど甘いという評価が定まりつつあるという。

その畑へと続く道は幅が狭く、タイトなヘアピンの連続だが、そんな“軽トラ用の道”であろうとV70はちゅうちょさせない。4.8mを超える長さこそ気にはなるが、よく切れる前輪とボディーの隅切りが功を奏し、カタログ値5.5mの回転半径以上に小回りが利くような気がする。225/50R17という今では細めのタイヤのおかげで、うっかり縁石を擦らないで済むし、なにより乗り心地もよくなっている。

帰路もほぼ同じルートをたどった。おなじく海老名で給油したところ、597.1km走って12.4km/リッターを記録。ついでに数字を示すならば、今回クルマを借りてから返却するまでの総走行距離は1475.2km。その平均燃費は11.2km/リッターだった。

カタログ上の燃費値13.6km/リッター(JC08モード)にはおよばないが、実際の走りっぷりを思えば十分に納得できる数値だ。燃費については、リッターあたりの走行距離だけではなく、満タンで走れる距離なども評価の指標となる。その点、V70 T4のタンク容量は70リッターと大きく、毎回600kmほど走って給油した際には、ゲージの上でまだ1/3ほどの燃料が残っていた。

そんな希代の“長距離ランナー”であるボルボだが、個人的にいつも感心するのは、一見なんの変哲もないような普通の造りながら、いつまで乗り続けても一向に飽きないシートである。見るからに派手なものや高級素材を使ったものは他にいくらでもあるが、数日はおろか数時間乗っただけでも、座り続ける気がなくなるクルマもある。その点においてボルボ車は、続けて乗っていたくなるような何かがある。この点に関してはその理由が何なのか、自分の頭の中で確たる分析ができていない。まだまだ走り込みが足りないのだろうか。

(文=笹目二朗/写真=荒川正幸)

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笹目二朗 ささめじろう



1945年生まれ。自動車メーカー勤務を経て、自動車専門誌『CAR GRAPHIC』の編集者に。現在はフリーの自動車ジャーナリスト。技術的知識に基づいた、歯に衣着せぬ論評で知られる。ボルボ関連の著書としては、『バルト三国をボルボで走る バルト海沿岸の国々をめぐるクルマ旅』(エイ出版社)がある。