“味な道”で心を満たす

XC60から降ろしたロードバイクで走ったのは、裏磐梯の桧原湖を巡る道である。国道と県道からなる周回道路は1周32km。ここでは毎年1回、「桧原湖1周ファミリーサイクリング大会」が開かれる。今年も5月最後の日曜日に行われたばかりで、すでに31回を数える人気イベントである。30kmあまりとはいえ、侮ってはいけない。周回道路は細長い湖からしばしば離れるため、けっこうアップダウンがある。標高も900mほどあるから、いきなりペースを上げれば、息もあがる。桧原湖周辺はランニングの高所トレーニングの舞台としても人気があるらしい。新緑に包まれた湖もきれいだが、湖の西岸から見える磐梯山の眺めもすばらしかった。「裏磐梯」とは、ここ磐梯山北麓一帯を指す総称だが、こちらから見える磐梯山も、荒々しい茶色の地肌をむき出しにした“裏側”のすごみを放つ。表と裏でこんなに山容の違う山も珍しい。

桧原湖を1周したあと、再び自転車をXC60に積み込み、磐梯吾妻スカイラインに上った。全長28.7km。最高1600m以上の高みまで上がる東北地方有数の山岳スカイラインだ。上っていく途中、数百メートル前方の道路を黒い四足の動物が横切った。助手席の郡カメラマンと思わず顔を見合わせる。「あれ、子熊だよね……」頂上の浄土平から先は火山灰質の荒涼とした景色が広がり、硫黄のニオイが立ち込める。「立ち止まってはいけません」と路肩に看板が立つ。火山ガスでガードレールも腐食している。よくこんなところに道路を通したものである。自然もスゴイが、人間もスゴイ。

気がついたら、燃料が残り少なくなっていた。液晶パネルに「走行可能距離20km」と出ていたのでアセる。帰りはエコランのようなケチケチ運転で走る。幸い下る一方である。アクセルを踏まず、車重を生かした惰力走行に努めると、走行可能距離がだんだん伸びてゆく。浄土平から下ること30kmあまり、猪苗代町手前のJAスタンドに滑り込んだときには「70km」まで回復していた。