Driving Impression 情熱と知性の美しきコントラスト 革新し続けるジャガー。2リッターエンジンを得たフラッグシップサルーン「XJ」は、パワーと効率、すなわち情熱と知性の、劇的で美しきコントラストで彩られていた。

文=渡辺敏史/写真=小林俊樹

大きな一歩を踏み出す

ジャガーが4気筒エンジンを採用する。それだけでも事件は事件だ。が、あろうことかフラッグシップとして40年以上の歴史を持つ「XJ」にそれを搭載するというではないか。
欧州系の自動車メーカーが軒並みダウンサイジングコンセプトを採り入れてきた、そのトレンドは理解している。それでも、その話は僕にとって結構な衝撃だった。

ジャガーのエンジンといえば現在はAJ系のV8、歴史の大半を担ってきたXK系の直6、そして幻のルマンカーである「XJ13」のそれを端緒とするV12——など、マルチシリンダーが大勢であったことはご存じの通り。滑らかさと力強さを両立させるためには、大きな排気量を多気筒で回す……と、それは物の道理でもあるし、ジャガーはそれを積むに足るステータスも備えている。

もちろん、ラグジュアリーモデルにとっても環境性能の向上は必須の命題だ。それを求めるユーザーも、金銭的問題ではなく社会的責任として省燃費車を積極的に選択すべき時代ではある。

……にしても、4気筒はやりすぎだろう。というか、そもそも4気筒のジャガーに「らしい」商品力は備わるのだろうか。乗ってみると相当切ないことになっているんじゃあなかろうか。早速、頭の中は不安と心配が渦巻いている。

件(くだん)のエンジンを搭載するXJのグレードはもっともベーシックな「LUXURY」で、価格は900万円。価格にはレザーシートやナビゲーション、19インチタイヤ&ホイールなどの装備も含まれており、高額なオプションで彩る必要もなさそうな充実度だ。試乗用に借り出したそれをぐるぐると見回しても、はた目にはV8を積んだこれまでのモデルとの差異はまったくといっていいほど見当たらない。そして遠目に眺めると、あらためてそのボンネットの中身が4気筒であることがにわかに信じられなくなる。