第5戦“天王山”鈴鹿は、本山が今季2勝目! 【FN 07】

2007.07.09 自動車ニュース
本山哲(Arabian Oasis IMPUL)は、今季2つの勝利をともに鈴鹿で獲得した。
写真左から2位のNo.40 ビヨン・ビルドハイム(DoCoMo DANDELION)、優勝したArabian Oasis IMPULの本山と服部尚貴監督、そして3位のNO.55 井出有治(ARTA)。
第5戦“天王山”鈴鹿は、本山が今季2勝目! 【FN 07】

【FN 07】 第5戦“天王山”鈴鹿は、本山が今季2勝目!

蒸し暑い天気となった2007年7月8日の決勝日。43周、250kmのスプリントレースに、ピット作業はあるのかないのか。互いの作戦がまだおぼろげなうちに、レースは思わぬ展開を見せた――

シリーズ折り返しを迎えた全日本選手権フォーミュラ・ニッポン、第5戦の舞台は三重県・鈴鹿サーキット。今季2度目となる鈴鹿の戦いで勝負の行方を決めたのは、皮肉にも赤旗による中断だった。ノーピットストップ作戦を取った選手が有利となり、予選6位の本山哲が今季2勝目を達成。2位はビヨン・ビルドハイム、3位に井出有治が続き、ポールポジションの松田次生は4位に留まった。

■雨の予選は、mobilecast IMPULのふたりがフロントロー

暦の上では小暑を過ぎたものの、予選日の鈴鹿は、霧雨のなかで午前のセッションがスタートした。ウェット宣言の中、レインタイヤを装着して全車がコースイン。終盤を迎え、走行ラインが乾き始めたが、スリックタイヤでのアタックにはやや厳しい状態。この時点でトップタイムをマークしていた松田次生は、2位以下に1秒近い大差をつけていたため、このまま首位安泰と思われた。

だがこのとき、セクターごとにトップタイムを叩き出しながら周回を重ねている選手がいた。なんとロイック・デュバルがスリックタイヤでアタックしていたのだ! スリッピーなコースをもろともせず、松田のタイムを約0.4秒上回ることに成功。暫定ポールポジションを奪った。

正午を過ぎ、一時は夏空が顔を出す。しかし、午後2時40分からの予選2回目を前に再び天気は暗転。細かい雨が僅かに降ってきた。本格的な雨となる前にアタックを、と考えるのはどの選手も同じで、予選開始と同時に我先にとコースへ繰り出した。スリックタイヤでアタックを開始するや、あっさり全車が自己ベストタイムを更新。ここでも早速、松田がトップに立ち、ライバルに牽制球を送る。

案の定パラパラと雨が落ち、このままポジション確定かと思われたが、幸いにも天気は一進一退。中盤はアタックを見送るほどの雨になったが、残り10分にはコンディションが好転。これでベストラップを刻む選手が現れ、その都度ポジションが大きく動くことになった。

この中で、タイミングよくクリアラップを取ったのは松田。さらにタイムアップを果たし、1'43.041をマーク。不安定なコンディションにめっぽう強いブノワ・トレルイエもタイムを削ったが、0.4秒差で2番手。3番手には0.532秒差で小暮卓史となった。

スタートシーン。ポールポジションのNo.2 松田次生(mobilecast IMPUL)が先頭、6番手スタートのNo.19 本山哲(Arabian Oasis IMPUL)が好スタートを決め2番グリッドからたスタートしたNo.1 ブノワ・トレルイエ(mobilecast IMPUL)に並びかける。
第5戦“天王山”鈴鹿は、本山が今季2勝目! 【FN 07】

■序盤は激しい攻防戦に

曇天から夏空へ。翌決勝日の鈴鹿は梅雨明け前の蒸し暑さに包まれた。
午後2時30分過ぎ、レッドシグナルが消え、43周のレースがスタート。予選4位のロニー・クインタレッリが好スタートを切るも、オープニングラップ途中で突然のスローダウン。クラッチトラブルが原因でまさかの戦線離脱となった。

トップは松田。周回ごとに後続との差を築き、逃げの態勢に入った。これにトレルイエが続き、予選7位からキレのあるスタートを見せたアンドレ・ロッテラーが3番手へ浮上、その勢いでトレルイエを攻め立てる。松田はこの間に逃げの一手で決着をつけたいところだが、トレルイエを仕留めたロッテラーが攻撃の手を緩めず、差が徐々に詰まり始めた。

トップ2台の攻防戦とは裏腹に、3番手トレルイエはペースが上がらず苦戦を強いられる。金曜日の練習走行時から細かなトラブルが続き、予選ではコースアウトや突然のマシンストップ、強いては決勝日朝のフリー走行に電気系統のトラブル発生、と今回は流れが悪い。4番手小暮にも1コーナーで逆転を許し、さらに後方の立川祐路もトレルイエを襲撃し始めた。

No.1 ブノワ・トレルイエ(mobilecast IMPUL)がバックストレートで大クラッシュを起こしレースは赤旗中断となった。エンジン部分とモノコック部分が引きちぎれるほどのアクシデントなった。写真は、事故現場から運ばれるエンジン部分。
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■トレルイエ、大クラッシュでマシンはバラバラに!

レースも折り返しという20周目。そのトレルイエを悲劇が襲う。バックストレートでスピン、ガードレールに突っ込んだマシンは、その反動でエンジンを搭載するマシン後部とモノコック側の前部とで真っ二つに! マシンの残骸がコースに放置され、レースは赤旗中断となった。

原因は、立川との攻防戦で2台はテール・トゥ・ノーズとなり、後方からマシンをイン側に振った立川のフロントノーズとトレルイエのマシン後部が接触。スピンにつながったようだが、大破したマシンからトレルイエは外傷もなく無事に救出され、その後の検査でも大きな問題はなかったのは幸いだった。

■赤旗中断で、レースのゆくえは……

大クラッシュの間、メイングリッドに残る19台のマシンが停止。この間にタイヤ交換が認められ、結果としてこれがレースの行方を決定付けた。

ノーピットストップ作戦組は、フレッシュタイヤを得ることになり万々歳。あとはチェッカーを目指すだけだ。一方、ピットストップ作戦組はレースの中盤以降にピットインを予定していたため、再開後には給油作業が待っている。加えて、前後車両のタイム差が消え去ったことで、激しい順位争いをも強いられた。

およそ30分後、セーフティカーの先導によりレースは再開。これを待ち構えたようにピットインするクルマが次々現れたが、トップの松田はひたすら逃げる。給油に先んじて、新しいタイヤ、軽いマシンで少しでもハイペースを持続させようとアクセルを踏み続けた。

3位のNO.55 井出有治(ARTA)。
3位のNO.55 井出有治(ARTA)。
優勝したNo.19 本山哲(Arabian Oasis IMPUL)(写真手前)と、No.40 ビヨン・ビルドハイム(DoCoMo DANDELION)。
優勝したNo.19 本山哲(Arabian Oasis IMPUL)(写真手前)と、No.40 ビヨン・ビルドハイム(DoCoMo DANDELION)。

■ノンストップ組が表彰台を独占

松田を除くピットストップ組が、みな作業完了。いつしか2番手には本山が浮上。3番手にビルドハイムが続く。奮闘を続けた松田は、粘りに粘って34周終了時にピットイン。後続に約17秒の差をつけていた。待ち構えたスタッフも給油とタイヤ交換の作業を僅か14.2秒で完遂。ベストな状態で松田を送り出し、6番手でコース復帰、目前の敵に迫った。

容赦なく攻撃を仕掛ける松田。だが前のファビオ・カルボーンも巧みに応戦。40周目にようやく料理し、次は4秒強離れたミハエル・クルムへと挑む。2秒近く速いペースの松田は瞬く間にクルムへと接近。だが残された時間は、1周半とごくわずか。しかし松田は諦めない。

セミファイナルラップのストレートでクルムをかわし、ファイナルラップでは目前の井出に喰らいつき、ついに最後のシケイン勝負へと持ち込む。

が、万策尽きて逆転ならず、4位でフィニッシュ。結果、後半は運を味方につけた本山が今季2勝目をマーク。2位がビルドハイム、3位には井出が続き、ノーピットストップ組が表彰台を独占した。

■後半も接戦は必至

今回の鈴鹿は、いわば“夏の天王山レース”だった。興味深いことに、この鈴鹿を制したものがタイトルを取っており、2000年以降は03年を除き、高い確率で実現されている。

現在のところ、ポイントトップは松田。10点差で本山とトレルイエが追随、さらに2点差で小暮とクインタレッリのふたりが続く。松田は安定した速さ、強さを見せてはいるが、本人の渇望する優勝にはまだ結びついていない。

これに対し、本山、トレルイエは王者経験者という強みがあり、ともに今季もすでに勝ち星を上げた。なかでも本山は、厳しいコンディションからレースをまとめ上げる力に長けている。

このほかにも、すべての条件がうまく揃うと爆発的に強さを発揮する強豪ドライバーが虎視眈々とそのときを狙っている。はたして、松田に今季初勝利が訪れるのか。それとも混沌とした展開が待ち受けるのか。ヒートアップする後半戦の戦いに注目だ。

(文=島村元子/写真=KLM Photographics J)

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