第91回:“奇跡の山”、高尾山に迫る危機
その3:気軽にハイキングが楽しめる(矢貫隆)

2007.05.07 エッセイ

第91回:“奇跡の山”、高尾山に迫る危機その3:気軽にハイキングが楽しめる

出発前、駐車場で一服。
出発前、駐車場で一服。
ケーブルカーとリフト乗り場。うららかな平日の正午前、満開の桜が訪れる観光客を出迎えていた。
ケーブルカーとリフト乗り場。うららかな平日の正午前、満開の桜が訪れる観光客を出迎えていた。

6本のハイキングコース

移動の足は、かつて西丹沢の檜洞丸にクルマで登山したときと同じ、編集部の「トヨタ・プリウス」である。

新宿から首都高速道路と中央道を利用して、わずか50分ほどで京王線の「高尾山口」駅に到着。高尾山は本当に気軽にハイキングが楽しめる距離にある。

駅前の駐車場にクルマを止めた。1日の駐車料金は1000円。週末を避けてでかけたのに、午前11時過ぎの時点で駐車場は7割方が埋まっていた。

駅の改札口の横にはコンビニがあって、食料品やら飲料やら土産物やらを売っているのだが、格安の簡易ザック、手袋、杖といったハイキング用品も揃っていて、急に思い立ってのハイキングにも対応できる品々が用意されていた。

登山口へと続く道には食堂や名物のそば屋さん、土産物店が軒を並べ、その突き当たりにはケーブルカーとリフトの乗り場がある。
歩きだすのもここからだ。

ハイキングコースは全8コース。11時40分、僕たちは少しばかり距離の長い「稲荷山コース( 見晴らし尾根コース )」を選んだ。甲州街道を左下に見る尾根道である。

お気軽コースから上級向けまで、ハイキングのルートは豊富。
お気軽コースから上級向けまで、ハイキングのルートは豊富。
ちょっと上級向けの6号路へと歩を進めたが……。
ちょっと上級向けの6号路へと歩を進めたが……。
運動不足がたたり、すぐに休憩、昼食。
運動不足がたたり、すぐに休憩、昼食。

多少なりともトレッキングを楽しめる6号路

歩き始めてすぐに疲れた。
昨年1年間、僕は京都で暮らしていた。『CG』で連載中の「タクシードライバー日記」の取材のため京都市内でタクシー運転手をしていたのだ。

ずっとクルマに乗る生活で運動不足。もちろん登山もしていなかった。そのブランクは思いのほか大きくて、歩きだしの登り道ですでに疲れ果ててしまったのだ。

1号路にしとけばよかった。
「早めにランチにしましょうか」
そうだな。甲州街道のクルマの音が聞こえない場所まで登ったらランチにしよう。

そう言った1分後、僕らのランチはもう始まっていた。
僕はトマトシチューを温め、A君は愛妻弁当を広げる。エスプレッソも用意した。

「高尾山の自然」がテーマの1号路は傾斜が緩い。それに較べると稲荷山コースは勾配変化に富んでいて、多少なりともトレッキングの雰囲気を味わうことができる。

アルプスにでも登りそうな大荷物を背負い、本格的な登山スタイルでこの道を歩く人たちが、食事中の僕たちの前を通り過ぎていく。
彼らの格好は「大袈裟」なのではない。たぶんゴールデンウィークにでも高い山に登る人たちだ。
この時期、高尾山や奥多摩の山には、本格的登山シーズンを前にして足慣らしのトレーニングをする人たちがやってくる。重装備はそのためなのである。

(つづく)

(文=矢貫隆)

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矢貫 隆

矢貫 隆

1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、 多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。 自動車専門誌「NAVI」(二玄社)に「交通事件シリーズ」(終了)、 同「CAR GRAPHIC」(二玄社)に「自動車の罪」「ノンフィクションファイル」などを手がける。 「自殺-生き残りの証言」(文春文庫)、「通信簿はオール1」(洋泉社)など、著書多数。