ポルシェとフォルクスワーゲン、経営統合でこれからどうなる!?(後編)

2007.05.01 自動車ニュース

ポルシェとフォルクスワーゲン、経営統合でこれからどうなる!?(後編)

ポルシェとフォルクスワーゲンは、2007年6月中にも経営を一体化すると伝えられる。
現地ドイツからのリポートで両社の過去と未来を検証する。

■売れても儲からないフォルクスワーゲン

(中編からのつづき)この高級路線戦略以外に、フォルクスワーゲンの経済不振が続いている原因として、モデルチェンジのタイミングの悪さと、製造コストの高さがあげられる。

技術マニアのもとで複雑化された「ゴルフ」を作る時間はトヨタ「カローラ」の何倍か、という話題がドイツのマスコミに持ち上がった。フォルクスワーゲンは、労働組合が強いせいか、人件費も業界で一番高いといわれているのだ。

「ゴルフ」などの評判は上々。相変わらず売れてはいるが、結果的に利益が確保されていない。そのためか、フォルクスワーゲン株は長く低迷してきて過小評価されていると思われる。(月刊誌『フォークス・マネー』)

■“渡りに舟”のポルシェ

この状況で先述したフォルクスワーゲン法の保護がなくなると、業界大手か投資ファンドによる買収攻撃や企業解体が起こる可能性が十分あるだろう。こういったシナリオはフォルクスワーゲン社内だけではなく、失業者増加を恐れる政界にとっても避けたいものであるはずだ。

そこに浮上した素晴らしい“助け舟”こそ、フォルクスワーゲン会長個人が関与する絶好調の会社、すなわちポルシェだ。

ポルシェ社は2005年に静かにフォルクスワーゲン株を集め、20%の株主となった。
「これ以上シェアを増やすつもりはない」と発表したが、2007年3月には30%の大台を超えた。フォルクスワーゲン法の制限がなくなると、ポルシェ社とニーダーザクセン州が一緒に支配権をもつことになり、敵対的買収を防衛できる。

ちなみにドイツの法律では、株の30%以上を所有するポルシェは、他の株主に「残りの株を完全買収する提案」をしなければならない。
しかし、この義務によりポルシェが示した買収株価は(法律上で最低必要な)ここ数ヶ月の平均株価。フォルクスワーゲン社の株は、最近著しく上昇したから、ポルシェの提示価格は現時点の株価を遥かに下まわるレベルでしかない。
つまり、この条件でフォルクスワーゲン株をポルシェに売る株主はいないはず。ポルシェがフォルクスワーゲンを即座に傘下にする可能性は、低いと思われるのだ。

■売り上げ7%、利益は対等

ドイツ国内で、このポルシェの助け舟は、敵対的買収防止策の意味合いで歓迎されているが、それ以上の効果も期待されていると思われる。
つまり、ポルシェがフォルクスワーゲンの経営に介入する可能性だ。

誤ったマネージメントで悩みの多いフォルクスワーゲンに比べれば、ポルシェの経営状態は、ドイツ自動車業界の奇跡ともいえる。フォルクスワーゲンのわずか7%にあたる売上げ高のみで、フォルクスワーゲンと同じくらいの利益を出し、さらに順調に伸ばし続けている。

その責任者はポルシェ社長のDr.ヴェンデリン・ヴィーデキング氏。業界トップの評判を持つ彼は、筆頭株主の代表としてフォルクスワーゲン社の監査役会に入った。
この人物、上記の問題の他に、最近の汚染スキャンダルや突然の社長交代で揺れたフォルクスワーゲン社を成功の道へ軌道修正する力を持っていると評される。

■とどまらぬピエヒ会長の夢

ポルシェ社のフォルクスワーゲン社への関わりが今のレベルで留まるかというと、そうでもないという見方が強い。

ポイントは、ピエヒ氏自身のもくろみだ。彼は最近、ドイツのトラックメーカーMAN(エム・アー・エヌ)社株の所有を増やした。
「ピエヒの夢は現実に近づく」(dpaドイツ通信社)という記事も目にするようになった。スポーツカーから大型トラックまで、自動車をすべてカバーする巨大企業を作りたいのではと考えられる。
その巨大企業。フォルクスワーゲンも含める各部門をポルシェ・ホールディング社の傘下に収めることが、ピエヒ氏の抱く夢か。

マネージメントスタイルの評判が微妙なピエヒ氏のこうした動向は、ドイツで疑問視されている。フォルクスワーゲンの会長であり、ポルシェの株主であり、さらにオーストリアのフォルクスワーゲン販売会社の株主という氏の多面的な立場は、経営一体化に際して問題になると思われる。

(文=廣川あゆみ/写真=廣川あゆみ/ポルシェ)

独ポルシェ本社ショールーム
独ポルシェ本社ショールーム
ポルシェの社長兼CEO、Dr.ヴェンデリン・ヴィーデキング氏
(写真=ポルシェ)
ポルシェの社長兼CEO、Dr.ヴェンデリン・ヴィーデキング氏
(写真=ポルシェ)

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