第1回:7月31日「富山県伏木港」

2007.04.28 エッセイ

第1回:7月31日「富山県伏木港」

『10年10万キロストーリー4』刊行記念!

2003年の夏に連載した「ユーラシア電送日記」を再録します。『10年10万キロストーリー』を代表作とする自動車ジャーナリスト、金子浩久は、1996年型「トヨタ・カルディナCZ」で、ウラジオストクからポルトガルはロカ岬までを、どのように駆け抜けたか!?


1996年型「トヨタ・カルディナ」に乗って、ウラジオストクからロシアに上陸。ユーラシア大陸を横切って、ポルトガルはリスボンを目指す! 自動車ジャーナリスト金子浩久が、現地から報告します。

はじめに

ヨーロッパ行きの飛行機の窓から地上を眺めていると、晴れていたので、シベリアの荒野がクッキリと見わたせた。曲がりくねりながら流れる川、小学校の理科で習った三日月湖、深い森などの間を細い一本道が通っている。よく見ると、クルマが蟻のように走っているではありませんか! ちょっと遠いけど、ああやって走り続ければ、「日本からだってクルマでヨーロッパまで行けるじゃん!」

そう思い付いてから数年。ようやく企画をスタートできることになりました。現地からインターネットを通して、旅の様子をお伝えします。

1万5000km

船で日本を離れるのが、こんなに風情があるなんて知らなかった。飛行機ならば、数分間のタクシーイングののちのフルスロットルで離陸してしまうのに、船は違う。
デッキに出て、岸壁の見送りの人たちに手を振り、港の様子を眺めながら、船体が渦を巻き起こしながらゆっくりと離れていく。デッキから投げられた色とりどりの紙テープが少しづつ伸びていき、最後には切れて、ヒラヒラと海に落ちていく。スピーカーからは、もの悲しげなロシアの曲が流れ、これじゃまるで昔の日活映画だ。エースのジョーや、二階堂達也はどこにいる?

2003年7月31日に、富山県伏木港からロシアの貨客船「RUS号」に1996年型の「トヨタ・カルディナ1.8CZ」を積み込み、ロシアのウラジオストク港を目指す。そこからカルディナでロシアを横断し、ベラルーシ、ポーランド、ドイツ、スイス、フランス、スペインと通過し、ユーラシア大陸最西端のポルトガルのロカ岬までの約1万5000キロを走ろうというのが、今回の旅の目的だ。

第1関門突破

飛行機で飛んでしまえば、成田からヨーロッパまでは半日で着ける。1ヵ月以上もかけて、わざわざクルマを運転してヨーロッパまで行こうなんて、酔狂以外の何ものでもない。ましてや、旅程の過半数を占めるロシアは行ったこともないし、情報も乏しい。

シベリアのある区間では、都市と都市をつなぐ道路が存在しておらず、人々はシベリア鉄道でしか移動できないらしい。その区間を移動したいクルマやバイクは貨車に積み込んで輸送するしか手だてがないとガイドブックには記してある。
また、ロシアではクルマ泥棒がたくさん横行していることも海外ニュース番組で見たことがある。だいたい、外国人が泊まれるホテルやレストランが存在しているのか。どんな種類のビザを取得すれば、入国できるのか。クルマを持ち込むことができるのか。
何も知らないところから情報収集と準備を始め、ようやくクルマを船に積み込むところまで漕ぎ着けた。ロカ岬まで、先は長いが第1関門は突破したというところか。

船は港を離れ、港の灯りが少しづつ小さくなっていく。船内に戻ると、さっきまで伏木税関の臨時出国管理室として使われていたホールが本来のディスコに戻って、大音響でちょっと昔のソウルミュージックを流し始めた。

(文=金子浩久/写真=田丸瑞穂/2003年8月初出)

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金子 浩久

金子 浩久

『10年10万キロストーリー4』
(金子浩久著)
1台のクルマに、10年もしくは10万キロ以上乗ってきたオーナーを、金子浩久が取材。クルマとヒトの生活を、丁寧に紙の上に載せていきます。『NAVI』人気連載の単行本化! →二玄社書店で買うアマゾンで買う