【スペック】全長×全幅×全高=4465×1935×1250mm/ホイールベース=2685mm/車重=1440kg/駆動方式=FR/7リッターV8 OHV16バルブ(511ps/6300rpm、64.9kgm/4800rpm)/価格=945万円(テスト車=同じ)

シボレー・コルベットZ06(FR/6MT)【短評(後編)】

GMを応援したくなる(後編) 2006.07.22 試乗記 シボレー・コルベットZ06(FR/6MT)コルベット史上、最強最速と謳われる「Z06」に試乗。511psを発生する7リッターV8エンジン搭載の新型には、味わい尽くすことのできない世界があるという。

手に汗にぎる圧倒的な加速

(前編からのつづき)7リッターV8なりの大トルクは、そこにはなかった。拍子抜けしつつ、でも油断は禁物とセカンドにシフトアップし、今度は右足を深く踏み込む。
鼓膜を突き破るような爆音とともに、Z06は3000rpmあたりでスーパースポーツの加速を演じはじめると、4000rpmではその世界を完全に超越し、重力をかなぐり捨てて、前方に吸い込まれていく。上半身がシートバックにめり込んだ自分は、どこかに飛ばされそうな気分になって、子供のように汗ばんだ手でステアリングをしっかり掴んでいた。

ビッグスポーツの圧倒的な加速感と、ライトウェイトスポーツのレスポンスが、なぜか同居している。別のカテゴリーでいえば、1リッタークラスのモーターサイクルを思わせる。いまやパワーウェイトレシオで1を切るモデルもあるあの世界に、Z06のダッシュは相通じるものがあるのだ。

ウインドスクリーンに速度や回転数を映し出すヘッドアップディスプレイは、このZ06にも装備される。フツーのコルベットではアミューズメントに思えたこのアイテムが、Z06では必要不可欠な機能に変わっていた。あまりに加速が凄すぎて、視線をメーターに落とす余裕がないからだ。
でもZ06、けっして“直線番長”ではなかった。

タイヤはノーマルより3〜4サイズ太くなっているのに、まっすぐ走る。ブレーキは、それだけで感涙にむせびそうなほど効く。Z06だけに装備されるドリルドディスクとフロント6/リア4ポッドのキャリパーのおかげもあるが、それ以上に軽さの恩恵をひしひし感じる。

右足に細心の注意を払えば、コーナリングスピードはけっこう高い。低重心のプッシュロッドV8にトランスアクスルを組み合わせるなど、パッケージングの段階で運動性能を追求した効果を痛感する。でも少しでも右足に力を込めれば、リアタイヤは小躍りするようにアウトへと滑り出していく。自分レベルの技量ではとうてい味わい尽くすことのできない世界が、そこにはあった。

世界一の自動車メーカーの底力

少しだけ冷静さを取り戻した心と体で、尋常ならざるパフォーマンスを味わいながら、世界一の自動車メーカーは、いざとなったらこういうクルマを作れなければイケナイと思った。
コルベットの送り手、ゼネラルモーターズ(GM)が苦境に陥っているのは、誰もが知る事実だ。最近のニュースでは、カルロス・ゴーン率いるルノー日産グループと提携交渉を始めるというから、相当深刻なのだろう。
数年後には、わがトヨタがGMを抜き、世界一の座につくのかもしれない。でも彼らに、コルベットZ06のようなクルマが作れるだろうか。
僕たちはクルマが好きだ。速いクルマ、カッコいいクルマが大好きだ。だからこそ世界一の自動車メーカーには、コルベットZ06のようなクルマを平気で作って売れる、器の大きさを持っていてほしい。
たった1台のスポーツカーに乗っただけなのに、僕は俄然、GMを応援したくなった。

(文=森口将之/写真=高橋信宏/2006年7月)

・シボレー・コルベットZ06(FR/6MT)(前編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000018392.html

関連記事
  • シボレー・コルベットZ06 Z07パッケージ装着車(FR/7MT)【試乗記】 2015.10.7 試乗記 アメリカが誇る高性能スポーツカー「シボレー・コルベット」に、最高出力659psの過給機つき6.2リッターV8エンジンを搭載したハイパフォーマンモデル「Z06」が登場。迫力のルックスと豪快な加速性能だけにとどまらない、“史上最強のコルベット”の魅力に触れた。
  • シボレー・コルベット グランスポーツ クーペ(FR/8AT)【試乗記】 2017.3.10 試乗記 7代目となる「シボレー・コルベット」に、シャシー性能を追求した「グランスポーツ」が登場。往年のレーシングカーの名を冠した高性能グレードは、“フロントエンジン・リアドライブをきわめた”と評すべき走りをかなえていた。
  • シボレー・コルベット スティングレイ(FR/3AT)【試乗記】 2017.3.4 試乗記 「スティングレイ」のサブネームを初めて冠し、ファンの間では「C2」の愛称で親しまれている2代目「シボレー・コルベット」。シルバーのボディーがきらめく半世紀前のアメリカンスポーツには、豊かさがあふれていた。
  • レクサスLC500“Lパッケージ”/LC500h“Lパッケージ”【試乗記】 2017.5.4 試乗記 “製品化を前提としない”はずだったコンセプトカーの発表から5年。ほとんどそのままの姿で登場し、世間を驚かせた「レクサスLC」がいよいよ日本の公道を走る。新開発のFRプラットフォームや10段AT、マルチステージハイブリッドなどの技術を満載した、新世代のラグジュアリークーペの出来栄えは?
  • ケータハム・セブン スプリント(FR/5MT)【試乗記】 2017.5.1 試乗記 「ロータス・セブン」の魅力を今日に伝える「ケータハム・セブン」に、“オリジナル・セブン”の誕生60周年を祝う限定モデル「セブン スプリント」が登場。クラシカルなデザインとプリミティブな走りがかなえる唯一無二の魅力に触れた。
  • 800psの「フェラーリ812スーパーファスト」が日本上陸 2017.5.23 自動車ニュース フェラーリ・ジャパンは2017年5月23日、最高出力800psを発生する新たなフラッグシップモデル「812スーパーファスト」を日本国内で初披露した。
  • ポルシェ911 GT3(RR/7AT)/911 GT3(RR/6MT)【海外試乗記】 2017.5.22 試乗記 ピュアなレーシングカーである「ポルシェ911 GT3カップ」譲りの4リッター水平対向6気筒エンジンを得て、一段とサーキットに近い成り立ちとなった新型「911 GT3」。その実力を南スペインで試した。
  • 「谷口信輝の新車試乗」――スマートBRABUSフォーツー エクスクルーシブ リミテッド(後編) 2017.5.11 mobileCG SUPER GTや86/BRZ Raceで活躍中の谷口信輝が、本音でクルマを語り尽くす! 今回も引き続き「スマートBRABUSフォーツー」に試乗する。フォーツーのかわいらしい走りにぞっこんの谷口。ずばり、同車の魅力とはなんなのだろうか。
  • ポルシェ・カイエンGTS(4WD/8AT)【試乗記】 2017.5.16 試乗記 発表から7年、その後のマイナーチェンジからもはや2年半が経過した2代目「ポルシェ・カイエン」。もはや円熟の域に達した感のある同車は今、われわれにどんな走りを見せてくれるのだろうか。スポーティーな「GTS」グレードのステアリングを握った。
  • レクサスLC500h(FR/CVT)/LC500(FR/10AT)【海外試乗記】 2016.12.23 試乗記 間もなくローンチされるレクサスの新型ラグジュアリークーペ「LC」。同ブランドが初めて挑戦するラージサイズクーペは、どのようなキャラクターを持ち合わせているのか? その出来栄えをスペインで試した。
ホームへ戻る