ドイツ、排ガス規制の現実

2007.03.14 自動車ニュース
排ガスレベルを識別するための「色別ステッカー」。
ドイツ、排ガス規制の現実

ドイツ、排ガス規制の現実

2007年3月9日、長年の議論を経て遂にドイツ連邦参議院によって、ディーゼル車の粒子状物質(パーティキュレートマッター/PM)フィルター装着に対する補助金制度が決定された。
この制度によって、クルマにフィルターを装着した場合、自動車税から330ユーロ(約5万2000円)が免除されるしくみだ。

■排ガスレベルを色分け

この金額は、フィルター装着にかかる費用の半額程度に相当する。日本とは異なり、ヨーロッパでは燃費がよくエンジンのトルクが太いディーゼル乗用車の人気は高い。ドイツ連邦自動車局によれば、2006年の乗用車の新車登録台数のうちディーゼル車が44%を占めている。

一方でこの新しい補助金制度の導入とともに、フィルターのないディーゼル車の税率がアップする。たとえば一般的な2リッターエンジンのディーゼル乗用車の場合、年間24ユーロ(約3700円)アップ。これはフィルター装着にかかる費用に比べれば決して高い金額ではなく、クルマの所有者の負担もそれほど大きくは変わらない。それにもかかわらず、この粒子状物質フィルターの生産は需要に対して追いつかない状況にある。多くの人がこぞってこの600ユーロ(約93000円)程度もするフィルター装着を始めたのだ。
その理由とは?

ひとつの大きな理由として、今年の7月1日より施行されるクルマの排ガスレベルによる交通規制があげられる。粒子状物質対策が必要とされる都市は環境ゾーンを設置することになり、ある一定の排ガスレベルを上まわる乗用車はそのゾーンの通行禁止という、過去に例のない厳しい交通規制だ。まずはシュトゥットガルトから施行され、そして次第にミュンヘン、ベルリンなど、その他の都市でも行われることになる。

この規制によって、たとえば1993年以前のガソリン乗用車、それに1996年以前のディーゼル乗用車は即刻ゾーン内通行禁止となる。続いて、これより新しい車両、たとえば2001年以前のディーゼル乗用車が同じように通行禁止をくらう見通しだ。

けれども、粒子状物質フィルターをつけることによって、排ガスレベルが一段階下がった扱いを受けることができる。3月1日からそのクルマの排ガスレベルを識別するための色別ステッカーの発行が始まった(写真)。違反をした場合は罰金と免許の減点が課せられる。

■クルマは悪者?

ディーゼル車規制強化の背景には、EUが1999年に決定した「空気中の有害物質に対して制限値を定める」条例がある。粒子状物質の規制に関しては2005年から制限され始めており、すでにドイツ全国に測定機が設置されていた。それぞれの定められた地点での空気中の粒子物質を測定し、1日の平均値が制限値以上の日が年間35日を越えた場合、その地方自治体にその粒子状物質を抑える対策が要求される。

測定地の選び方はヨーロッパ諸国それぞれで異なるが、環境問題に真面目に取り組んでいるドイツでは交通量のもっとも多い大通り沿いに測定機が設置される。よって、制限値をはるかにオーバーし、その日数が年間100日以上という大気汚染地点が多発している。

ところが、こうした測定地での測定を続けていても実際の生活環境での大気汚染レベルは分からない。なぜなら、粒子物質の原因は道路交通だけに限らないからだ。
一番大きな原因は産業廃棄物や工場からの排気、それから住宅の暖房機器あるいは発電所の排気などである。車輌によって引き起こされる原因は、ディーゼル車の排ガスだけではなく、タイヤの磨耗時に発生する粒子物質もある。乗用車の排ガスの影響については色々な見解があるが、その割合は10%程度だろうと考えられている。
ちなみに、自動車交通のないドイツの北海の島でも規定値をオーバーする値が観測された。この場合、空気中の塩が粒子物質と検知されたからだ。

このようなことから、ディーゼル車の排ガス対策が大気中の粒子物質を抑えられるかどうかは疑問視されている。
2005年に米国ブッシュ大統領がドイツを訪問した際にフランクフルト近辺は数日間厳しい交通規制が敷かれた。当時行われた同様の測定調査では大気中の粒子物質の数値レベルは普段とまったく変わらなかったと報道された。
それにもかかわらずドイツ政府がこの対策に踏み切ったことは論理的な判断に基づいているとは言いがたい。それよりはむしろ、端からクルマを悪者と決めている環境ロビーの影響が強かったのではないだろうか。

(文と写真=廣川あゆみ)

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