第8回:アメ車の味とはなんなのか? 〜日欧のクルマと違う道へ(前編)

2006.12.28 エッセイ

第8回:アメ車の味とはなんなのか? 〜日欧のクルマと違う道へ(前編)

砂漠の青空、澄み切った空気の中、「チャージャーパトカー」の雄姿。試乗会にはパトカーも用意されていたのだ。
合計130台の大集合! 試乗の順番は「First come, First serve」(早い者勝ち)。ガンガン乗り放題だが、そのうち疲れてきて……。

毎年恒例、米国メディア団体のMPG(Motor Press Guild)主催のトラックデー。日米欧韓各自動車メーカーが最新型車両を持ち込み、サーキットと一般路で走行体験をさせてくれるビッグイベントだ。
今回集まったのはおよそ130台。アメ車たちは他国モデルのなかに埋もれず、個性を出していたのだろうか?

■アメ車の個性をハイパフォーマンスモデルで試す

皆さんはこんなことを思ったことはないだろうか。
「クルマの技術って、メーカーによってそんなに違いがあるの? どのメーカーだって、最新コンピュータ技術を導入しているし、生産技術は上がっているし、他社関連の情報だってウェブ上に溢れかえっている。だいたい、比較車両としてどのメーカーも競合車は購入してバラバラにして詳細解析しているのだから、同じ価格帯のクルマならどこのメーカーも似たようなクルマになるでしょ……」

確かに一理ある。ところが、現実には各社モデルには技術的な差がある。その差を背景として、各車の“味”も変わってくる。特に、乗り味、走り味の差は大きい。
その原因は、購買コスト&製造コストとの兼ね合い、開発責任者のこだわりやエゴ、実験担当部署の重鎮との社内的なしがらみ、開発担当役員の“鶴の一声”……など様々だ。

ではそうした差は、アメ車と日欧韓車、いかに違うのか。

今回の「トラックデー」で、約50台のステアリングホイールを握ったが、そのなかでも各社が力を入れ、アメ車の色が濃く出ているハイパフォーマンスモデルに絞って、乗り味、走り味を比較してみたい。

場所はウイロースプリングス・ロングコース(1周約3km)。ここでは200km/hオーバーの高速コーナリングから、ハードブレーキングまでチェックできるほか、近場の一般道でも乗り心地などを試すことができる。

雑誌記者、フリージャーナリスト、テレビ局リポーター、メーカー広報担当者……朝食会を兼ねた、ドライバーズミーティング風景。
「BMW M6」「Z4 M」「キャデラックCTS-V」など、ハイパフォーマンスカーたちが勢揃い。ピットで走行待ちの様子。
左から「キャデラックXLR-V」「ダッジ・チャージャーパトカー」「チャージャーSRT8」。どれも尖がりシェイプで、速そう!

■GMはドイツへ向かう

まずはGM。レースでも活躍中の「キャデラックVシリーズ」をチェックする。

往年のキャデラックといえば、世界的に見ても高級車の代名詞だった。しかし80年代になると、フロリダナンバーのお爺ちゃん&お婆ちゃんが全米巡りをする『終の棲家(ついのすみか)』ならぬ『終のクルマ』的イメージが染み付いてしまった。

そこでブレイクスルーと銘打って、キャデラックブランドの大改革を行った。つまり、AMGっぽいハイパフォーマンスモデル化=Vシリーズを誕生させたわけである。

Vシリーズのウリは“ニュル育ちの走り”。現在はミシガン州内に高速走行テスト施設が完成しているので、ニュルテスト回数は減ったそうだが、最終的な走りのチェックにはニュルに行くようだ。ポルシェ、オペル関連のレースチーム施設を拠点として、1周21kmのノルトシュライフェ(北フルコース)を激走するテストだ。

今回の試乗会では2台に試乗した。
「XLR-V」(4.4リッターV8+スーパーチャージャー、443ps)は、同じGMグループに属する「シボレー・コルベットC6」と基本コンポーネンツを同じくする。ゆえに、同様のフィーリングかと思いきや、かなりの違いを感じた。

パワステは終始軽めのセッティングとなり、ステアリングへの路面からの情報フィードバックが薄い。シャシー全体のガッシリさはあり、ロードホールディング性は高い。だが、ブレーキ容量がもっとあってもいいと感じた。決して効きが甘いワケではないが、ベンツ、BMWはたとえAMG、Mでなくても、もっと効くだろう。

次の「CTS-V」(6リッターV8、400ps)は、デビューしたてのCTSがシャシー/サス/ハンドリングの凝縮感が粗かったのに比して、随分と洗練されたようだ。これもニュルで鍛えた成果なのだろうか。

2007年初め、新型に生まれ変わるといわれるCTS-V。BMWのMや、レクサスのハイパフォーマンスモデル「IS500」相手にどこまで進化するのか楽しみである。

このようにGMは、ニュルで鍛えるというドイツ車ライクな進化を遂げることで、一つの持ち味にしようとしているのだ。
(この回つづく)

(文=桃田健史(IPN)/2006年12月)

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桃田 健史

桃田 健史

東京生まれ横浜育ち米テキサス州在住。 大学の専攻は機械工学。インディ500 、NASCAR 、 パイクスピークなどのアメリカンレースにドライバーとしての参戦経験を持つ。 現在、日本テレビのIRL番組ピットリポーター、 NASCAR番組解説などを務める。スポーツ新聞、自動車雑誌にも寄稿中。