第291回:回答! なぜレクサスLSがCOTYなのか?
「それはナショナリズムの発芽だ!」(小沢コージ)

2006.11.30 エッセイ

第291回:回答! なぜレクサスLSがCOTYなのか?「それはナショナリズムの発芽だ!」

小沢コージ、なぜレクサスLSに10点満点を与えたのか!?

■世界の高級車の大半がヨーロッパモノ

なんかね。遂に決まった日本カー・オブ・ザ・イヤー。レクサスLSが一番になって、オレも最高点の10点を入れたんだけど、結構非難というか「わからない!」というご意見をいただいたんで、所信表明演説というか、オレなりの回答をいたしましょう。ぬはは。

正直、賛否両論あります。あのデザインでいいのか? 眠くないか? うなぎ犬みたいじゃないか? あれでベンツ、BMWに本当に対抗できるのか? 乗った時の感動は薄くないか? 初代セルシオの方がインパクトあったでしょう? 正直、単なる4代目セルシオなんじゃないのか? などなど。

そのキモチもよーくわかります。多少は配点に政治力もあったでしょう。トヨタという今後世界一になる自動車メーカーのオーラもあったのでしょう。

でもね。オレは違う。オレがLSに10点入れた理由はまったく違います。あれは寄らば大樹の陰でもなんでもなく、単純にナショナリズムの発芽なのだ!

というのもね。オレは自動車ジャーナリストなる仕事についてつくづく残念なことがあって、それは所詮は自動車がヨーロッパ文化の発明品ってところだ。

それはまあ歴史だから仕方ないとしても、一番悔しいのは今も世界の高級車の大半がヨーロッパモノってところだ。相変わらずクルマという商品で効率よく利益を上げているのは、上のクラスのベンツであり、BMWであり、ポルシェでありロールス・ロイスであり、その手の利益率の高さはあのトヨタでさえ及ばない。

言ってみれば“自動車合コン”で一番おいしいところをもってくのは、ヨーロッパの奴らなのだ!

2006-2007のイヤーカー「レクサスLS460」

■負けっぱなしでいいんですか

もちろん向こうには歴史はもちろん、文化も技術もあるし、逆を言えば寿司やお寺文化に関しては日本が一番。クルマの一部ブランド品がヨーロッパモノ一番のままでもしょうがないじゃないかという意見もあります。そもそももとをたどれば戦争に負けたんだし……と解釈はいろいろありましょう。

だけどオレは言いたい。それだけでいいんですか。負けっぱなしでいいんですかと。

来年には台数&利益で世界一になるであろうトヨタとはいえ、ハッキリ言って主戦場は大衆車だ。コストパフォーマンス勝負。つまり、「いいけど高い!」ではなく「良くて安い!」という舞台で一番に立っただけ。

もちろんそれはそれで偉大なことだけれど、アートや純粋移動快楽装置としてはまだまだの部分がある。

そこでレクサスはとりあえず戦う姿勢を見せたのだ。昨年8月から日本で初めて正面切ってバトルを開始した。その最大の右ストレートがLSなのだ。これを評価せずしてどうする!

もちろん、まだまだの部分はあるけど、極端なハナシ、いつまでたっても海外でジャルパックといわれ、白人系外国人にオンナを食われる日本人でいいんですか? イエローモンキー、エコノミックアニマルでいいんですか? と。まあ、簡単にイメージを例えてしまえばそういうことだ。

とにかく俺は高級車で負け続ける日本車を見るのがイヤなのだ。日本人が物まね上手なのは本当だし、それはそれで凄いとは思うけど、もっと別の面も見せたいじゃないか。だからレクサスにはがんばって欲しい。それだけなのだ。

COTY決定に色めき立つ取材陣。LSの隣には、吉田守孝 商品開発本部レクサスセンターチーフエンジニア。

■“高級車ワールドカップ”は厳しい

それにね。俺は日本が高級車で世界一になるのは、日本代表サッカーチームがワールドカップで優勝するのと同じくらい大変なことだと思う。

俺の勝手なイメージでは、日本がワールドカップ決勝でブラジルに勝つまでには少なくともあと50年はかかる。テクニック、体力、精神力、そして運とすべてが揃わないと勝てないワールドカップはそれほど厳しい。

で、同じく“高級車ワールドカップ”も厳しいんですよと。デザイン、性能、そして志+天才やらなんやらすべてが揃って初めて世界一になれる。
そしてそれを今後作り出せる可能性を秘めた日本企業は、今のところトヨタが最右翼だと思うのだ。だって、世界一資金があるんだから。高級車作りにはなによりそれが欠かせないんだから。

だからレクサスLSに10点なのだ。ブランド立ち上げで最初っからこき下ろすのは適当ではないと思ったのだ。

ワールドカップ最初のフランス大会だって日本は3戦全敗だったじゃないか。それでもオレは心底あの岡田ジャパンを否定する気にはなれないし、それどころかやっぱりよくやったと思う。

なんだかんだでまだ出たて。否定するのは簡単だし、それは次でいい。なにより高級車は日本の高級感の縮図なのだ。そうそうたいしたものができるわけがない。よってオレは今回の配点にまったく後悔してません!

ただし、一言言いたいのはレクサスの開発陣様、もっとがんばってください! ってことだ。特にデザイン、今ひとつインパクトありませんよってね。アレで満足してるとしたらそりゃダメだ。がっくり。誰が見ても一目でわかる「いいクルマ」じゃないと。

もっとシンプルで強く、別世界を作り出して欲しい。そういう意味では、まだまだ負けっぱなしかもしれない。ホント、がんばってくださいませよ!

(文と写真=小沢コージ/2006年11月)

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』