第290回:新型三菱パジェロ試乗
“3歩進んで2歩下がる”ということ(小沢コージ)

2006.11.23 エッセイ

第290回:新型三菱パジェロ試乗“3歩進んで2歩下がる”ということ

2006年10月にフルモデルチェンジされた4代目「パジェロ」。三菱いわく、「オールラウンド4WD=多目的本格4WD」である。
たまたま試乗会場に置いてあった3代目。今よりボディがグラマラスですぅ〜。

■成功した2代目のイメージに戻した

しばらく前、新型パジェロの試乗会に行ってきたんですけど、ひと目見て驚きましたね。昔、どっかの歌に「3歩進んで2歩下がる」ってくだりがあったと思うけど、まさにその通り。2代目のボディに3代目のマスク=4代目!

こういうクルマ作りもあったんだなぁって感じです。エンジン、シャシー、4WDシステムなどは基本的にキャリーオーバー。細かく言うと、一部ガワの部分、つまり背中にしょってるスペアタイヤの位置が真ん中になってて、そのカバーの先端までボディとみなし、ロングボディの全長が約5メートル近くになってるのは新しいけど。

でもまあ、当然と言えば当然なのか。ハッキリ言って3代目はその流麗というか、グラマラスなボディデザインが行き過ぎた結果の失敗。そもそもパジェロは機能優先のシンプルデザインがウケてたわけだし、最大の成功を遂げた2代目のイメージにハッキリと戻しているのだ。理想を言えば、個人的にはフロントマスクも戻して欲しいとこだけど。

というか大昔、クラウンもやりすぎた一部リアデザインをマイナーチェンジの時に戻したことがあったっけ。

ついでに「パジェロってコレだよね……」というゴールドとグリーンとか、シルバーとブルーの2トーンカラーが設定されてるのも面白い。ホント、なりふりかまわず三菱ブランドの再構築をしているという。

センターパネルの構成は基本的に初代と同じ。一番上が方位磁石などの計器類!

■すべてを一新するプロダクトじゃない

ちなみに乗った印象もまさに昔通り。今の乗用車然としたシティ派SUVと比べると正直古臭い。ステアリングを切った方向と必ずしもボディが進む方向が一致しなくて、大きなボディをコントロールするには慣れを要する。

新たに可変バルブタイミングリフト機構のMIVECが付いてパワーアップしたという3.8リッターV6も昔通りパワフル。というか昔以上か。
でもまあこの味わいもまた、昔を懐かしむ人にはいいのかもしんないなぁ。

でもオレは思ったなぁ。なんか日本も世界的になってきたと。その昔、トラバントって旧東ドイツのクルマがあって、それは戦争直後から変わってないというある種の“シーラカンスさ”が売りで、理由は当時の東独の経済状況。要するにメーカー側に変える力がないし、ユーザーにとっても変える必要がない。

そのとき、なんというか、“クルマが進化する”ということはある種の幻想なのだと気づかされた。単純に社会状況なのだ。余裕があれば進化するし、余裕がなければ進化せずに退化したりもする。

もちろんパジェロは微妙ながら進化してるし、過去、そういうクルマは数多くあった。ポルシェ911なんてその代表例だし、マツダ・ロードスターもそう。2代目ロードスターなんて事実上は初代の改良型だからね。

というかスポーツカーとか本格的クロカン4WDって本来そういうものなんだと思う。毎度毎度のモデルチェンジですべてを一新するプロダクトじゃない。

ユーザーと二人三脚で微妙に成長し、たまのたまーにババッと大変身するのだ。そう考えると今のパジェロはさなぎみたいなものだ。なるべくお金を使わずに最低限の変化で力を蓄え、いつかパッと蝶になる!

と行きたいところだと思いませんか? ねぇ、三菱さん!

(文と写真=小沢コージ/2006年11月)

エンジンは、3.8と3リッターのV6。3.8ではMIVECを採用した。

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』