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【スペック】
全長×全幅×全高=4890×1830×1470mm/ホイールベース=2803mm/車重=1820kg/駆動方式=FF/3.2リッターV6DOHC24バルブ(230ps/6200rpm、29.4kgm/4800rpm)/価格=722万4000円(テスト車=750万7500円/パーキングセンサー=12万6000円/メタリックペイント=15万7500円)

ランチア・テージス 3.2V6(FF/5AT)【試乗記】

稟としながら世間に背を向けるかっこよさ 2006.11.23 試乗記 ランチア・テージス 3.2V6(FF/5AT)
……750万7500円

デザイナー曰く“五感で知覚する上質”を目指したという「ランチア・テージス」は、販売不振ゆえに2007年の生産中止がささやかれる。発売から4年を経たランチアの最上級セダンは、今も魅力を持っているのか? 3.2リッターV6モデルに試乗した。

伝統が生み出す高級感

「ランチア・テージス」は写真で見ると小さくみえるが、全長=4.89m、全幅=1.83m、全高=1.47mの堂々たるサイズを誇る。車両重量も1.82トンと2輪駆動の普通のセダンとしては重いほうだ。日本仕様のエンジンはV6DOHC排気量3.2リッター、230ps/6200rpm と29.4kgm/4800rpm を発生する。エンジンは横置きされ、5段ATを介して前輪を駆動する。ほかに2.4リッター5気筒ディーゼル(175ps)もあるが、距離を走るキャラクターではないような気もする。

オーソドクスなスリーボックスセダンとしては奇抜さを避け、比較的地味な基本形を採ってはいるが、やはり注目度は高く、交差点で止まっていても、対向車からジーッと見つめられることが多い。このあたりからもイタリアデザインが非凡であることがわかる。

前後のランプ類や、シンプルながらラジエターグリル周辺の目鼻だちは威風堂々。見るからに高級な雰囲気を発散する。一目でランチアとわかるイタリア国内はさておき、日本ではまだまだランチアの知名度が高いとは言えないものの、このたたずまいには、当然ながら伝統が感じられ、視線もそこに集まるのだと思う。高級感は宣伝費をつぎ込んで作り出されるものではなさそうだ。

内装にも品格がにじみでる

内装も見事。細く折れ曲がったウッドモールは艶消しの磨き出しで、面積もけして広いものではない。にもかかわらず、ピカピカに塗装された、広い面積の派手なウッドパネルよりはるかに上品で高級感がある。木材を折り曲げて使う手法は傘の柄などにも見られるもので、イタリアならではの処理技術による。

革装のシートは角の丸い、いかにもデザインされた形状ながら、座り心地はすこぶるよろしく、手触りの柔らかさは絶品。見た目もさることながら実質を重んじるイタリアデザインの神髄をみせる。中央部の細かな穴空き処理は滑りを効果的に防いでくれ、ホールド感に優れるし、汗もかきにくい。

インテリアのカラーコーディネイトも素晴らしい。赤ピンク系を含む茶色っぽい革は実に微妙な色合いで、華やかさと落ち着きを同居させながら、品格をにじませている。

高精度ぶりはランチアの名に恥じない

サスペンションはフロント/リア共にマルチリンクと凝った形式を採る。サスペンションアームの長さは伝統的に長めに採られ、ジオメトリーの確かさと剛性感に裏打ちされた設定は、ガシッとした直進安定性と概ねフラットで重厚な乗り心地を実現している。

ただし微妙な領域の個人的な好みを言わせてもらえば、ダンパーの作動精度などはランチアにしては大雑把に感じられる。イタリア車は実はドイツ車よりも足下の剛性感は上。骨太な押さえ込みは、停止時にブワーンと前後に揺れるブッシュのコンプライアンス(たわみ)をドイツ車ほど許さないのだ。

ステアリングギアの歯当たりの高精度ぶりなど、しっとりした切れ味はまさにランチアの名に恥じない。高級車を名乗るからには、どのクルマもこのレベルまでは目標としてほしいところだ。

動力性能の高性能ぶりを心ゆくまで試せるチャンスは無かったが、滑らかな駆動系の剛性感や、時折耳に届くV6のポロローッとした軽い快音とは別に、アイドル振動は現代のV6としてはやや大きなほうか。ATとはいえ、どちらかといえばシフトレバーを駆使してエンジン回転を上げ下げしたほうが楽しめる。それでも2000rpm以下でDレンジの、とろとろ流しも痛痒はない。

ランチアは難しいブランドだと思う。アルファほど年齢層の幅は広くないし、好戦的な「情熱」を必要としない。ドイツ車や北欧のクルマに興味を持つ人のような「硬さ」を求められても困る。「渋味」とも違うような気がする……。枯れた透明感のある風景の中で、月下に吠える狼のような、稟とした中にも世間に背を向ける無頼の徒といった、一種のかっこよさがこのクルマからイメージされる。

(文=笹目二朗/写真=高橋信宏/2006年11月)

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