フィアット・グランデプント 1.4デュアロジック テラ(FF/2ペダル5MT)【試乗速報】
健全に発育した「プント」 2006.11.08 試乗記 フィアット・グランデプント 1.4デュアロジック テラ(FF/2ペダル5MT) ……224.0万円 フィアットの小型ハッチバック「プント」が、新型となりひとまわりボディを拡大、「グランデプント」と名称を改めた。初代、2代目と乗り継いだリポーターが、新たに追加された5ドアモデルで、「プント」らしさをチェック。そして気になる2ペダルMTは……。ブレない方向性
「グランデ」大歓迎である。最近のクルマの例に洩れずプントの場合も初代より2代目、2代目よりこの3代目と脱皮するたびに大きくはなったが、内容的には格段の向上を果たしながらボディの拡大代は最小限に留められ、初代以来の軽快な持ち味が少しも損なわれていないのだ。「健全な発育」は、依然5ナンバー枠に収まる1685mm(先代比+25mm)の全幅によく象徴されている。
デザインのキレは歴代プントの中でも随一といえそうで、たまたまこれまで2世代にわたって乗り継いできた筆者の目にも、大いなる魅力として映るのだった。
3代目としては3ドアの「1.4 16V スポーツ」が一足先に日本デビューを果たしていたが、モデルチェンジのメリットは、やはり実用車に相応しい5ドアでより鮮明になった。
メガ+スカイドームがオススメか?
新型でなにより嬉しいのが広々した開放感。特にそれを実感させるのが前席である。全幅は大差ないのに造形の妙か肩まわりに格段の余裕が生まれたように感じられ、スラントしたノーズこそ確認できないものの、ボディ自体はウエストラインが低く、Aピラー付け根にも小さな三角窓が新設されて視界抜群。部屋に入った途端、パッと華やいだような明るさだ。ドアミラーの守備範囲が広がったのも喜ばしい。
ただし、後席は4人の大人が乗るには必要最小限といったところ。大幅な改善とまではいかない。
こうなると、どうせなら「パンダ」に続いて用意された前後ツインガラスルーフの「スカイドーム」を選び、さらなる開放感を満喫したい。
グレードは下から標準モデルのデュアロジック(179.0万円)と同「メガ」(192.0万円)、同「ギガ」(209.0万円)、同「テラ」(224.0万円)の4種がある。機構面は全車共通で、グレードは装備の差だけだから、レザーシート(ギガ以上に標準)やパーキングセンサー(テラのみに標準)といった上級車顔負けのアクセサリーを望まないのであれば、メガにスカイドームを追加(13.0万円高)し、存分に楽しむという手もある。
手動ならイケるデュアロジック
スポーツとの違いは、同じ1.4リッターでもDOHC4バルブヘッドからSOHC2バルブに格下げされ、18ps落ちの77psを発するにすぎないエンジンと、6段MTに代わってデュアロジックと呼ばれる2ペダル式5段MTを与えられたギアボックス。パンダで初めて導入されたこれは、以前のCVTに比べてマイナス面ばかりが目立ち、それを知った時にはガッカリしたものだが、いざ乗ってみるとさほどでもないことが判明した。
たしかに自動変速モードではシフトアップの瞬間に機械自身の躊躇とそれに伴う“前のめり”が認められ、変速マナーとしては決して誉められたものではない。しかしこのクルマの場合には、中・低速を重視したトルク特性と、サイズのわりに軽く仕上がった車重が功を奏してか、現実の速さそのものは実用上充分といえる。
そればかりではない。むしろ、考えを変えてこれをクラッチ操作の不要なマニュアルと積極的に捉えると事態は一変、不満が一気に解消されるだけでなく、マニュアルならではの圧倒的なリニア感が得られ、いかにも持てるパワーを使い切った時のような満足感に浸れるのだ。初心者から腕に覚えのあるベテランまで一家で共有するようなケースにも適していると思える。
ミドルクラスのフラット感
ハンドリングと乗り心地は、基本的に従来型プントの延長線上にある。むろん、それはプントらしい乗り味が受け継がれているという意味で、個々のレベルは設計が新しいぶん、着実に向上している。
電動パワーステアリングは旧型同様、操舵力が切り換えられるタイプだが、その差は縮まり、どちらを選んでも適度なフィールと手応えが得られる。これまでの2世代と比較にならないくらい強力になったブレーキも頼もしい。乗り心地はホイールベースが50mm伸びたぶん、全体にフラット感が増し、いまやミドルクラスのそれに近い。ただし、軽量車の宿命かフロアからのロードノイズが侵入するのはやむを得ないが、全体のレベルはエンジン音の低下や遮音の改善によりはるかに静かになった。
ジウジアーロとフィアットの合作といいながら、なぜかベルトーネ・デザインの「アルファGT」を彷彿させる後ろ姿に、ちょっと心惹かれる筆者であった。
(文=道田宣和(別冊CG編集室)/写真=峰昌宏/2006年11月)
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