第50回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その1「狼の皮を被った羊(前編)」〜

2006.11.06 エッセイ

第50回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その1「狼の皮を被った羊(前編)」〜

1972年3月に発売されたTE27こと初代「カローラ・レビン1600」。ボディカラーはこの「モンテローザオレンジ」と「インディアナポリスオリーブ」と呼ばれるダークグリーンの2色のみだった。
第50回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その1「狼の皮を被った羊(前編)」〜(田沼 哲)
こちらは「スプリンター・トレノ1600」。フロントおよびリアエンドのデザインを除いてはレビンとまったく同じ。ただし車重はレビンの855kgより10kg重い865kg。ボディカラーはこの「デイトナオリーブ」と「ヘイトアシュベリーオレンジ」の2色だが、色そのものはレビンのそれと同色。
第50回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その1「狼の皮を被った羊(前編)」〜(田沼 哲)

誕生40周年を迎えた2006年10月に、10代目に進化したトヨタ・カローラ。それを記念した特別編として、今回は往年のカローラおよびその兄弟車だったスプリンター・シリーズに存在した「これっきりモデル」について紹介しよう。
かなりマニアックな、「重箱の隅」的な話題と思われるので、読まれる際は覚悟のほどを……。


トヨタ・カローラ・レビンJ1600/スプリンター・トレノJ1600(1973-74)

■スパルタンな走りのモデル

型式名TE27から、通称「27(ニイナナ)レビン/トレノ」と呼ばれる、初代「カローラ・レビン1600/スプリンター・トレノ1600」。
英語で稲妻を意味する「LEVIN」、いっぽう「TRUENO」はスペイン語で雷鳴と、パンチの効いた車名を冠した両車は、2代目カローラ/スプリンター・クーペのコンパクトなボディに、セリカ/カリーナ1600GT用の1.6リッターDOHCエンジンをブチ込み、オーバーフェンダーで武装した硬派のモデルとして、1972年の登場から30余年を経た今なお、愛好家の熱い支持を受けている。

「日本の絶版名車」のような企画に必ずといっていいほど登場する「27レビン/トレノ」のベースとなったのは、それらが誕生する以前のカローラ/スプリンターシリーズの最強モデルだった「クーペ1400SR」。
SRとは「スポーツ&ラリー」の略で、カローラ/スプリンター・クーペのボディに、ツインキャブを装着して最高出力95ps/6000rpm、最大トルク12.3kgm/4000rpmを発生する直4OHV1407ccエンジンを搭載したスポーティグレードだった。

ちなみにカローラ/スプリンター・クーペには、1400SRと同じエンジンを搭載した「1400SL」というモデルも存在していた。「SL」は「スポーツ&ラクシュリー」の略なのだが、このSLに比べるとSRは装備が簡素で、より硬い足まわりを持った、スパルタンな走り重視のモデルだったのである。

レビン/トレノの象徴だったボディ同色の「オーバーフェンダー」を強調した、トレノのデビュー当初のカタログ。
第50回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その1「狼の皮を被った羊(前編)」〜(田沼 哲)
黒一色のスパルタンな「トレノ」の内装。「1400SR」をベースに、インパネ中央の電流/油温/油圧計、運転席フットレストなどを追加している。ラジオや助手席のフットレストはオプション。「レビン」もステアリングホイール中央とグローブボックスのフタにあるエンブレムが違うだけである。
第50回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その1「狼の皮を被った羊(前編)」〜(田沼 哲)
セリカ/カリーナ1600GTから移植された直4DOHC1588ccの2T-G型エンジン。圧縮比9.8、ツインチョークのソレックス40PHHキャブを2基装着して最高出力115ps/6400rpm、最大トルク14.5kgm/5200rpmを発生した。圧縮比を8.8に下げたレギュラーガソリン仕様の2T-GR型も用意されており、こちらは最高出力110ps/6000rpm、最大トルク14.0kgm/4800rpmとなる。
第50回:「これっきりモデル」in カローラ・ヒストリー〜その1「狼の皮を被った羊(前編)」〜(田沼 哲)

■「ただ者ではない」雰囲気

レビン/トレノは、その1400SRのサスペンションをさらに硬め、175/70HR13という当時のレベルでは超扁平タイヤ(1400SRは155SR13)を履かせ、ステアリングギア比をクイックにするなどの変更を施したシャシーに、セリカ/カリーナ1600GT用の2T-G型エンジンを移植している。

このエンジンは、カローラ/スプリンターに使われていた1.4リッターのT型をボアアップした直4OHV1.6リッターの2T型をベースに、ヤマハ発動機が開発したものである。チェーン駆動のDOHC2バルブヘッドを持ち、ツインチョークのソレックスキャブレターを2基装着して、1588ccから最高出力115ps/6400rpm、最大トルク14.5kgm/5200rpmを発生した。

クロームメッキされたモールをすべて外すなどして、いっそう簡素化されたボディには、太いタイヤをクリアするためにFRP製(注1)のオーバーフェンダーを装着。「ただ者ではない」雰囲気を漂わせていた。

車重はレビン855kg、トレノ865kg(注2)で、馬力あたり重量はレビンで7.43kg。同じエンジンを積んだセリカ1600GTが車重940kgで8.17kgだったといえば、レビン/トレノの俊足ぶりが想像できるだろうが、カタログでは最高速度190km/h、0-400m加速16.3秒を謳っていた。

ラジオすらオプションで81万3000円という価格は、当時はもっぱら高級車用だったパワーウィンドウまで標準装備して87万5000だったセリカ1600GTに比べると割高な感が否めなかったが、走り好きの若年層を中心に人気を博した。また、その資質を活かしてモータースポーツでも活躍。軽量コンパクトであることを武器にレースよりラリーで戦績を残した。(つづく)

(文=田沼 哲/2006年11月)

(注1)73年4月以降のモデルはスチール製。
(注2)ノーズのデザインの違いにより、4ドアセダン、2ドアクーペともにスプリンターのほうがカローラより車重が10kg重かった。(つづく)

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田沼 哲

田沼 哲

NAVI(エンスー新聞)でもお馴染みの自動車風俗ライター(エッチな風俗ではない)。 クルマのみならず、昭和30~40年代の映画、音楽にも詳しい。